経営者が知っておきたいLGBTの基礎知識/後編

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弁護士 堀江 哲史

弁護士 堀江 哲史

1979年 三重県桑名市生まれ
2002年 立命館大学法学部卒業
2010年 旧司法試験最終合格
2012年 弁護士登録(愛知県弁護士会所属/名古屋第一法律事務所所属)
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弁護士 堀江 哲史

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経営者が知っておきたい LGBT の基礎知識/前編では、LGBTの説明のほか、セクシュアリティについての基礎知識について説明しました。 今回の記事では、当事者を取り巻く現状などについてお話をします。

LGBTを取り巻く社会制度

LGBTなどセクシュアリティの多様性に関する日本の法制度は、充分なものではありません。法律としては、「性同一性障害特例法」と、それに関する手続規定があるのみです。この性同一性障害特例法は、戸籍上の性別の取り扱いを自認する性に変更することができるものですが、手術が必要であるなど要件が厳しすぎるという批判があります。加えて、戸籍上の性別の取り扱いだけで、当事者が抱えている問題が解決されるわけではないことも、注意が必要です。

前回ご紹介したように、モデル就業規則でソジハラについて書かれるほか、いじめ防止基本方針の改訂で、LGBT生徒の保護の項目が盛り込まれるなど、行政の動きは進んでいます。また、同性カップルに、婚姻制度と同様の関係にあることを証明するパートナーシップ制度を導入する地方自治体が出てきています。

さらに、日本では、同性カップルの法律婚はできませんが、この状態が憲法違反であるとして、2019年2月に東京、大阪、札幌、名古屋で、国を相手にする裁判も起こされました(私は、名古屋の事件の代理人を務めています)。

このように、LGBTを取り巻く日本の社会制度は、まだ充分ではない段階ではあるものの、少しずつ性の多様性に配慮した社会に進んでいる状況にある、といえます。

LGBT と企業の対応

このような社会状況の中で、外資系企業・上場企業を中心に、LGBTフレンドリーを表明する企業が増えてきています。

顧客対応の点では、携帯電話の大手3社は、同性パートナーを家族割引の適用対象としています。また、保険会社でも、同性パートナーを生命保険の受取人にできたり、損害保険の「配偶者」に同性パートナーを含むとする商品が出てきています。住宅ローンでも、同性カップルでの共同ローンができる銀行が増えてきています。

また、従業員に対して、福利厚生に関して、同性パートナーを「配偶者」に含める企業や、採用において性の多様性を尊重する姿勢を打ち出す企業も現れてきています。

社内外における当事者のニーズに応え、選ばれる会社になるべく、LGBT、SOGIに関する社内研修を行う企業も増えてきています。

LGBT 対応に関する裁判例の紹介

最後に、企業のLGBT対応に関する裁判例を2つ紹介します。

(1)ゴルフクラブ入会拒否事件

ゴルフクラブへの入会を希望した女性が、性同一性障害特例法によって、男性から女性へ性別の取り扱いの変更をしていたことを理由に入会を拒否されたため,ゴルフクラブを相手どって慰謝料等の支払いを求めた事案で、一審、二審ともに、損害賠償請求を認めています(静地浜松支判H26.9.8)。

ゴルフクラブ側は、入会拒否の理由として、性同一性障害者の入会が、ロッカールーム,浴室等を使用する際などに不安感を抱くなどを挙げましたが,一審判決は、原告が「戸籍のみならず声や外性器を含めた外見も女性であったこと」「女性用の施設を使用した際,特段の混乱等は生じていないこと」から、「被告らが危惧するような事態が生じるとは考え難い」としています。

また、一審判決では、ゴルフクラブ側の対応を「自らの意思によっては如何ともし難い疾患によって生じた生物的な性別と性別の自己意識の不一致を治療することで,性別に関する自己意識を身体的にも社会的にも実現してきたという原告の人格の根幹部分をまさに否定したもの」と、強く批判しています。

(2)性同一性障害解雇事件

MtFの労働者が、服務命令に従わず、女性の服装などで出社し続けたことを懲戒解雇事由の一つとされた事案で、解雇を無効とした裁判例もあります(東京地決H14.6.20)。

判決では、企業側が当面の混乱を避けるため「女性の容姿をして就労しないことを求めること自体は、一応理由がある」としましたが、企業側が職場における混乱などを回避するための措置をとっていなかったなどとして、懲戒解雇を無効としました。

なお、「女性の容姿をして就労しないことを求めること自体は、一応理由がある」という点については、判決から15年以上たった現在では、違う認定がされる可能性も相当程度あると考えられます。

最後に

このように、会社としては、性の多様性を前提として、顧客サービスや、社員の対応、また、職場の意識啓発に努めていくことが求められるといえます。 この傾向は、今後さらに進んでいくと思われ、自社が適切に対応できるか、一度検討されてみるのはいかがでしょうか。一例として、企業のLGBTに対する取り組みを評価するPRIDE指標がありますので、ぜひ参考にしてみてください。

経営者が知っておきたいLGBTの基礎知識/前編

2019.01.24

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弁護士 堀江 哲史

1979年 三重県桑名市生まれ
2002年 立命館大学法学部卒業
2010年 旧司法試験最終合格
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