損害賠償と損害の種類について

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弁護士 山本 律宗

弁護士 山本 律宗

2006年3月 私立名古屋高校卒業
2010年3月 南山大学卒業
2013年3月 南山大学法科大学院卒業
2013年9月 司法試験合格
2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属
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弁護士 山本 律宗

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お客様や取引先と契約書を交わす際,損害賠償に関する規定が置かれていることが通常です。しかし,その規定の文言にまで注意を払って見ることはあまりないかもしれません。

一口に「損害」といってもその分類は様々です。例えば,通常損害・特別損害や直接損害・間接損害,財産的損害・非財産的損害,積極的損害・消極的損害などが挙げられます。

そのため,いざ損害賠償の規定を使おうとして,「そういえば直接損害って何?」,「直接損害と間接損害との違いは?」,「通常損害と直接損害って何が違うの?」等の疑問が出てくることになります。ここでは,そんな「損害」の分類を整理してみたいと思います。

なお、損害賠償条項全般に関して注意すべきポイントについては、こちらをご覧ください。
契約書の損害賠償条項について知っておきたいこと

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財産的損害・非財産的損害

「財産的損害」とは,債権者の財産上に生じた不利益をいいます。この中には生命や身体に対する不利益も入ります。例えば,A社が購入したB社の商品に不良があったために発火し,A社に保管中の他社の商品が消失した場合などが挙げられます。

これに対して,「非財産的損害」とは,債権者の精神状態に生じた不利益です。一般的に慰謝料と呼んでいるものがこれに当たります。例えば,パワハラやセクハラによって精神的に苦しい思いをしたことによる不利益などが挙げられます。

積極損害・消極損害

「積極損害」とは,既存の財産の減少をいいます。例えば,A社がB社から商品を購入したものの,その商品に不良があったため,それをA社が修理した際の修理費などが挙げられます。

これに対して「消極的損害」とは,債務の履行がなされれば得られたであろうの利益の減少をいいます。例えば,転売利益(A社がB社より仕入れた商品をC社にA社の利益を乗っけて販売したときのA社の利益分など)や営業利益(A社がB社の商品が届かないために休業状態にあった場合,休業することがなければその期間に挙げることができたAの利益など)などが挙げられます。

通常損害・特別損害

「通常損害」とは,社会通念上,一方当事者が契約内容に沿ってきちんと履行しなかったことによって一般に生じると考えられる損害のことをいいます。

例えば,買主が売主から買った商品を第三者に売却したところ,その商品が不良品であったために買主が支払った賠償金,買主が目的物を使用して得ることが確実であった営業利益,借主が目的物を滅失させた場合のその物の滅失それ自体,売主が目的物を引き渡さなかった場合に買主が代品の調達を強いられたことによって生じた費用などが挙げられます。

これに対して「特別損害」とは,契約内容をきちんと履行してもらえなかった一方当事者が特別の事情を予見し又は予見することができた損害のことをいいます。例えば,売主が目的物を引き渡さなかったため,買主が既に結んでいたその物の転売契約を履行できずに失った転売利益,買主が転買主に違約金を支払ったことなどが挙げられます。

この両者の区別は明確ではありませんが,一般的には,現実に発生した損害のうち,その時代・社会の経済関係や生活様式に応じて(具体的には,当事者の属性・立場・関係,目的物の種類・性質,経済情勢など),予見可能性の証明の有無を問わず,賠償すべきだと客観的に判断されるものが通常損害ということになります。

ですので,例えば,転売については,買主が商社などであれば転売をすることは当然といえるでしょうが,買主が消費者であれば転売は例外的なことです。これによれば転売利益は,通常損害にも特別損害にもなり得るということになります。

直接損害・間接損害

直接損害とは,被害者に直接に生じた損害をいいます。例えば,A社がB社に対して販売した商品が不良品であり,その商品が購入したCさんがその商品の使用により怪我をした場合などです。

これに対して間接損害とは,A社がB社に対して販売した商品が不良品であり,その商品をB社が展示をしていたところ,発火し,B社の他の商品も延焼して損害が生じ,さらに,近くにいたB社を訪れていたCさんがやけどを負った場合など被害者に直接に生じた損害が波及し第三者に生じた損害をいいます。

契約書にある「直接損害」の意味

契約書には,「甲又は乙は,相手方が本契約に違反したことにより損害を被ったときは,直接損害に限り賠償請求をできるものとする。」との文言がある場合があります。

どのように理解するのが良いのでしょうか。民法上,「直接損害」という文言は法律上ありません。そこで,この「直接損害」という言葉を契約を締結した当事者がどのような意味で使っているかが問題となります。

恐らく,契約書を作成した当事者間においては,本契約を違反したこと,つまり債務不履行を起こしたことによって一般的に契約の相手方に生じる損害については賠償するけれども,それを超えて当事者が特別の事情を予見し又は予見し得た場合の損害についてまで賠償責任を負うことはないという合意したかったのでしょうから,ここにいう「直接損害」は通常損害の意味と捉えるのが無難ではないでしょうか。その方に解した方が民法との関係でも素直だと思います。

契約書には,「直接損害」との記載があるものが見られます。しかし,その言葉の意味を正確に使っていることは少ないように思います。また,民法は,直接損害・間接損害という区分けではなく,通常損害・特別損害という区分けが基本です。ですので,その様な区分けを使われるのが無難かと思いますので,今後契約書を見直される際は参考にしてください。

また、契約書の損害賠償条項では,損害賠償額に上限を定めたり,損害の範囲を限定したりする条項が定められている場合がありますが、その意味や効力についてはこちらをご覧ください。
損害賠償の上限や範囲を定める契約条項の有効性

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弁護士 山本 律宗

2006年3月 私立名古屋高校卒業
2010年3月 南山大学卒業
2013年3月 南山大学法科大学院卒業
2013年9月 司法試験合格
2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属
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