直接損害とは何か

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弁護士 山本 律宗

弁護士 山本 律宗

2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属

各種契約書では、多くの場合、損害賠償に関する規定が置かれています。

その損害賠償に関する規定の中で、損害の種類として「直接損害」「間接損害」という用語が使われている場合があります。

例えば、「甲又は乙は,相手方が本契約に違反したことにより損害を被ったときは,直接損害に限り賠償請求できるものとする。」といった規程です。

この規程によれば、賠償を請求できるのは「直接損害」で、それ以外は賠償請求できないことになりますので、「直接損害」とは何かということが大変重要な意味を持つことになります。

では「直接損害」とは何でしょうか。また、直接損害と対比して用いられる「間接損害」とは何でしょうか。

目次

直接損害と間接損害

実は、民法上、「直接損害」や「間接損害」という文言は存在しません。

また、講学上も「直接損害」「間接損害」という用語に定まった定義がある訳ではありません。

したがって、直接損害や間接損害とは具体的に何を示しているのかを一般的な形で示すことは困難です。

通常損害と特別損害

民法上存在するのは、「通常損害」「特別損害」という損害の区分です。

民法416条は次のように定めています。

第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

この「通常生ずべき損害」のことを「通常損害」、「特別の事情によって生じた損害」のことを「特別損害」といいます。

416条に書かれているように、「通常損害」であれば、当然に損害賠償の対象となるのに対して、「特別損害」であれば、「当事者がその事情を予見すべきであったとき」に限って損害賠償の対象となります。

したがって、「通常損害」なのか「特別損害」なのか、というのは大変大きな意味を持つのです。

具体例

具体例で見てみましょう。

例えば、A社が、B社に対して、とある機械の製作を委託する契約を結んだとします。

ところが、B社は約束の期日までに機械を製作することができず、1ヶ月間、納品が遅れてしまいました。

この場合、期日に遅れたことで、A社が、その間に他から別の機械を一時的に借りなければならなくなった費用や、期日に間に合っていれば、その機械を稼働させて得られたはずの営業利益は、「通常損害」にあたります。

したがって、予見可能性の有無を問わず、賠償すべき対象になります。

これに対して、例えば、B社からの納品が遅れている間にA社が一時的に借りた機械に欠陥があったため、発火してA社の工場が全焼してしまったとしましょう。

この場合、B社の納品の遅れに派生して、最終的に工場が全焼するという損害が発生しているわけですが、これは、一時的に借りた機械にたまたま欠陥があり発火するという「特別な事情」によって生じた損害と言えますので、「特別損害」になります。

したがって、「特別な事情」について予見可能でなければ、賠償の対象にはならないことになります(一時的に借りた機械にたまたま欠陥があり発火することは、当然予見不可能ですので、賠償の対象にはなりません)

通常損害か特別損害かの区分

上の例では通常損害か特別損害かというのは比較的分かりやすいですが、実際の事例の上では、どちらに該当するのかは、実はそう簡単に区分できるわけではありません。

例えば、約束が守られなかったことによって得られなかった転売利益(A社がB社より仕入れた商品をC社に販売するときのA社の利益分など)一つとっても、買主が商社などであれば転売をすることは当然といえるでしょうが,買主が消費者であれば転売は例外的なことです。したがって、転売利益は,通常損害にも特別損害にもなり得るということになります。

一般的抽象的にいうと、現実に発生した損害のうち、その時代・社会の経済関係や生活様式に応じて(具体的には、当事者の属性・立場・関係,目的物の種類・性質,経済情勢など)、予見可能性の証明の有無を問わず、賠償すべきだと客観的に判断されるものが通常損害ということができます。

契約書における直接損害と間接損害の意味

さて、以上のような理解を前提に、契約書において「直接損害」「間接損害」という言葉が使われている場合について考えてみましょう。

定義がされている場合

まず、契約書の中で、直接損害とは何か、間接損害とは何か、について別に定義を置いている場合があります。

この場合は、「直接損害」や「間接損害」の意味はその定義によることになりますので、契約書の冒頭や、損害賠償に関する規定の前後に、こうした定義付けの規程がないか探してみましょう。

定義がされていない場合

これに対して、特段の定義付けががされていない場合には、「直接損害」や「間接損害」という言葉が使われている条項の規程ぶり等から、その意味を解釈することになりますが、上でみたような「通常損害」や「特別損害」と同じような意味合いで使っている場合も少なくありません。(とりわけ、予見可能性の有無によって賠償対象になるかどうかを決めている場合など)

「直接損害」「間接損害」という語感からすると、なんとなく「一時的に生じた損害か」「派生的な損害か」という意味合いにもとれますが、それも結局、ある特定の損害についてそのどちらにあたるのかは容易に区別出来るものではありません。

やや身も蓋もない言い方をしてしまうと、結局どこまで賠償の対象とするのが妥当か(請求を受ける側にとって酷ではないか)という結論から導いているような側面もあります。

いずれにしても、「直接損害」や「間接損害」という用語に確たる定義があるわけではないのは事実ですので、とりわけこれから契約書を締結する際に、契約書文中でこうした用語が用いられている場合には、後に争いが生じないようにその意味合いを明確に定義付けたり、例示をする、あるいは、民法上の区分でもある「通常損害」「特別損害」といった用語を用いるなどの工夫をすることが有益です。

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この記事を書いた人

2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属

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