リース契約をクーリングオフしたい

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弁護士 堀居 真大

平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属
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事業で使うために、コピー機や車をリースしようと思うのですが、リースの仕組みがよく分かりません。レンタルやローンとは何が違うのでしょうか。

また、リース契約を結ぶときに何か注意しておかなければならないことはあるでしょうか。クーリングオフという制度を聞いたことがあるのですが、リース契約をクーリングオフすることはできますか。

目次

リース契約とは

まず、リース契約について説明します(ここでは、もっとも一般的な「ファイナンス・リース」についてご説明します)。

リース契約とは、会社などが新たな設備等を導入する際に、その設備を購入するのではなく、リース会社から借りて利用する契約をいいます。一般的な例としては、パソコンやコピー機などです。

ここでご注意頂きたいのは、リース契約とは「借りる契約」であって「買う」契約ではないということです。

例えば、あなたが100万円のコピー機を購入したいけど十分な資金がないという場合では、リース会社があなたの代わりにそのコピー機を購入して、あなたにコピー機を貸す代わりに、あなたから購入代金を分割して受領するということです。

リース契約とレンタル契約、ローン契約との違い

リース契約とよく似た形態の契約に「レンタル契約」があります。

例えば自動車を例に挙げると、車を借りたいと思う場合には、レンタカー会社とレンタル契約をすることも、リース会社とリース契約を締結することもできます。

レンタカー契約は、短期の利用を前提としているので、費用は比較的高めであり、レンタル会社の在庫内の物件からしか選ぶことができませんが、そのかわり中途解約が原則可能です。

一方で、リース契約は、長期の契約を前提としているので、費用もレンタル契約よりは安価で、何より対象物件を自由に指定できます。その代わり、中途解約ができません(クーリングオフについては後述します)。

よく似ているけれど全く違う契約に割賦契約(いわゆる「ローン」)があります。ローンとリースの最も大きな相違点は、ローンが「売買」である一方で、リースは「賃貸借」であることです。

例えば自動車を購入する際にローンを組んだ場合、自動車は「購入」して自分のものとなります(ただし、ローン期間が終わるまでの間に限り所有者名義がディーラーや信販会社となる場合があります。所有権留保といいます)。しかし、リース契約は「借りている」にすぎないので、リース期間が終わったら、いくらリース料を支払っていても、自動車はリース会社に返却しなければなりません。

リース契約のメリット

では、なぜリース料を支払っても自分のものにならないリース契約の方が良いのでしょうか。

それは、リース契約はレンタル契約に比べて割安であり、ローン契約に比べて手軽だからです。

自動車を例にとると、1年以上自動車を利用する場合にはレンタル契約は割高となる場合が多いです。マイカーローンなどのローン契約は、頭金を求められる場合が多く、毎月の税金や車検、メンテナンスなどの費用や手間も自分で負担しなければなりません。

その点カーリースは、頭金が不要で、税金や車検などの諸費用や手続もリース会社が負担してくれるので、毎月の定額費用以外の費用負担や手間がなく、車の車種変更も面倒な売却手続きをせずに行うことができるなど、一定の費用で手軽に車を利用することができます。

近時はリース契約もバリエーションが豊富で、税金や車検に加えて整備点検やオイル交換、消耗部品の交換などもリース会社が行うメンテナンスリースという方式もあります(もちろんその分、費用は高額となります)。

何より、リース契約が現在のように広く普及するようになったのは、リース契約が手軽なことに加えて、リース料は全額経費として損金処理することができる点にあります。手軽さに加えて全額損金処理できることから、特に利益が出ている会社において、リース契約が広く普及するようになったのです。

リース契約のトラブルを防ぐために

しかし、手軽である反面、リース契約には注意すべき点が多数あります。

まず、もっとも注意すべき点として、リース契約は「解約できない」ということであることは、既にご説明しました。

それ以外にも「販売会社が契約当事者とはならないので、トラブルが起きやすい」という問題があります。

リース契約は、ユーザーとリース会社の間で締結され、リース物件を提供する会社(販売会社、サプライヤーなどと呼ばれます)は契約当事者ではありません。

例えば、あなたがあるコピー機をリースするとします。多くの場合、購入を勧めてくるのはそのコピー機の販売会社であり、リースの契約書もその販売会社が用意することが多いのですが、リース契約書の契約当事者は販売会社ではなくリース会社です。販売会社は契約当事者ではないのです。

というのも、コピー機のリース契約が締結される場合には、まずユーザーであるあなたが指定したコピー機を、販売会社がリース会社に代金一括払いで売ります。この時点で、売買は「販売会社とリース会社」の間で成立し、コピー機の所有者はリース会社になります。

そして、ユーザーは、リース会社が購入したそのコピー機を、毎月リース料を支払って「借りる」のです。つまり、リース契約を締結した時点で、あなたにリース契約を斡旋した販売会社は当事者ではなくなってしまうのです。

なので、後から「あまりに高額すぎる」「販売会社の説明内容と商品が違う」など、販売会社対する不満やクレームがあったとしても、それを理由にリース会社に対する支払いを拒むことができないのです。

このようなリース契約の仕組みを悪用して、販売会社がリース契約を勧める際に必要な説明をせず、あるいは虚偽の説明をしたり、商品が欠陥商品だったりするなどして、ユーザーが損害を被ったとしても、販売会社が逃げてしまうなどして責任を問うことができない場合に、リース会社に対するリース料の支払義務だけが残ってしまうというトラブルが頻発しています。

クーリングオフ制度について

このようなリース契約の特徴を利用して、これまでにも悪徳販売会社がユーザーを騙してリース契約を締結させるというトラブルが多発しました。

こうした被害を救済する制度として考えられるのが、特定商取引法に定められているクーリングオフ制度です。

クーリングオフとは、一定の形態の取引(訪問販売や電話勧誘販売等)について、契約後一定の期間内であれば、無条件で契約を解約できる制度です。

もっとも、特定商取引法は、「営業のために若しくは営業として締結する」契約を適用の対象外としています(特定商取引法第26条1項1号等)。

そのため、一般消費者であればクーリングオフが出来るケースでも、「営業のために若しくは営業として締結する」リース契約についてはクーリングオフを使うことはできないのです。

だからこそ、クーリングオフができないことを見越して、事業者に不当なリース契約を締結させる悪質業者が後を絶ちません。

事業者のリース契約とクーリングオフ

事業者であってもリース契約のクーリングオフが可能な場合

もっとも、事業者であれば当然にリース契約のクーリングオフが出来ないというわけではありません。

そもそも、特定商取引法が「営業のために若しくは営業として締結するもの」に関する契約を除外しているのは、あくまでも、契約の目的・内容が営業のためのものである場合には適用しないという趣旨です。

したがって、たとえ事業者であっても、その者にとって、営業のためもしくは営業として締結しているのではないのであれば、クーリングオフ制度の適用は可能なのです。

例えば、形式的には事業者が契約をしていても、その実態に照らして、事業用というよりは、主として個人用や家庭用に用いるものであるような場合には、クーリングオフの適用を除外すべき理由はありません。したがって、このような場合であれば、たとえ事業者であってもクーリングオフが可能ということになります。

「営業のために若しくは営業として締結する」とは

このように「営業のために若しくは営業として締結するもの」に該当するかによって、クーリングオフが可能かどうかが決まってきますので、どのような場合に「営業のために若しくは営業として締結するもの」となるのかは非常に重要となります。

この点について、令和4年2月9日付けの行政通達(「特定商取引に関する法律等の施行について」)

「営業のために若しくは営業として締結するもの」に該当するかは、契約の対象となる商品又は役務に関する取引の種類、消費者が行おうとする利益活動との関連性や目的、消費者が契約の対象となる商品又は役務を利用した利益活動に必要な設備等を準備しているかなどの事情を踏まえて、当該消費者が当該取引に習熟していると認められるかどうかを総合的に検討する必要がある。

「特定商取引に関する法律等の施行について」

としています。

事業者のリース契約についてクーリングオフの適用を認めた裁判例

裁判例でも、例えば、平成19年11月19日名古屋高等裁判所判決は、印刷画工業を営む個人事業主が申込みをした通信機器(事務所用電話の主装置及び電話機)のリース契約について、「事業のためにされたものではない」としてクーリングオフの適用を認め、リース会社に対してリース料の返還を命じています。

判決は、「営業のために若しくは営業として締結するもの」にあたらないといえる事情として

  1. 専ら賃金を得る目的で1人で印刷画工を行っていたに過ぎず,その規模は零細であったこと(売上は年間約100万円程度)
  2. リース契約締結の4ヶ月後には廃業届けを出していること
  3. 事務所といっても、自宅兼用で借りていた借家を事務所として使い続けていたに過ぎないこと
  4. 事業規模や事業内容からしても,従前から使い続けていた家庭用電話機が1台あれば十分であったこと
  5. リースの目的物である事務所用電話の主装置は、印刷画工という仕事との関連性も必要性も極めて低いこと

等を指摘しています。

また、東京地裁平成27年10月27日判決も、住宅兼店舗で喫茶店を営む個人が締結した電話機、ファクシミリのリース契約について、「営業のために若しくは営業として」に該当しないとして、クーリングオフの適用を認め、リース会社によるリース料の請求を否定しています。

判決は、「営業のために若しくは営業として締結するもの」にあたらないといえる事情として

  1. リース契約を締結した経緯(訪問販売員に勧められる等して導入)に照らし、営業との関連性が乏しいこと
  2. 経営する喫茶店は、本人と妻のみが従事し、1日の来客は30人程度、利用客は地元の固定客で、電話番号は電話帳に記載していないこと
  3. 営業の手段として電話機及びファクシミリの有益性は希薄で、電話機は個人的使用が中心、ファクシミリは業務のために全く利用していないこと

等を指摘しています。

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