リース契約を解約できるか

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弁護士 堀居 真大

1994年 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
2011年 弁護士登録(愛知県弁護士会)/名古屋第一法律事務所所属

 

交通事故を中心とした一般民事を広く取り扱う。弁護士になる前は損害保険会社で勤務しており、中小企業や事業者の目線を大切にしたいという気持ちから、商取引全般、特に中小企業や個人事業者に関する法的トラブルに積極的に取り組んでいる。

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美容室を開業する際に、ホームページの作成のリース契約を締結しました。しかし、開業当時はわかりませんでしたが、今思うとあまりにも高額で、それでいて業者が宣伝していたような効果はまったく見られませんでした。

文句を言おうと思ったら、その業者は倒産したのか音信不通になっていました。なのでリース会社にリース契約の解約をしたいと言ったら「解約はできません」と言われてしまいました。このような場合にもリース契約は解約できないのでしょうか。

目次

リース契約は解約できないのが原則

リース契約は、リース会社がいったん全額支払ってリース物件を購入し、その代金を分割してリース契約者に請求するという性質のものです。そのため、レンタル契約とは異なり、リース物件を使わなくなったなどの理由で解約することは原則できません。

借りたお金の返済を途中でやめることができないのと同様に、リース料の支払いをやめることも原則としてできないのです。

商品に欠陥がある場合には解約できるか

では、例えばリース物件に欠陥や瑕疵がある場合にも解約できないのでしょうか。

この場合にも、原則として解約はできません。というのも、一般的なファイナンス・リース契約では、リース契約の申込書のほとんどに「リース物件に瑕疵があってもリース会社はその責任を負わない」という内容の条項があるからです(一般的に「瑕疵担保責任免責特約」などと呼ばれます)。

理屈としては「リース物件を販売したのは販売会社(サプライヤー)であり、リース会社はその代金を立替払いして分割で請求している(ファイナンス)だけだから、物件の性質にまでリース会社は責任を負わない」ということになります。

このような特約は身勝手にも思えますが、判例では「特段の事情のない限り」こうした特約も有効とされています。

したがって、製品の欠陥や説明不足、または虚偽の説明などが原因でリースを解約したい場合にも、リース会社にリース契約の解約を求めるのではなく、リース料相当額を損害額としてサプライヤーやメーカーに賠償を請求するよりほかないということになります。

「特段の事情がある場合」とはどのような場合か

では、瑕疵担保責任免責特約が無効になるような「特段の事情」がある場合とはどのような場合でしょうか。

裁判例では、リース会社と販売業者との間に緊密な業務提携関係や実質的経済的な一体性がある場合に、瑕疵が重大で修補等がなされなければ契約の目的が達成できないような事例で、リース料の支払い拒絶やリース契約の解除を認めるものがあります(一例として仙台高判1992年4月21日判決)。

しかし、このようにリース会社の責任を認める例は極めて少なく、しかも交渉だけではリース会社は決して解約などには応じませんので、裁判手続きを経る必要があります。

もっとも、近時は悪質なリース会社も少なくありません。特に近時、ホームページやSEO対策サービスなど本来リースに馴染まない性質の商品を、開業したての個人事業主などに対して、専門的知識がないことに付け込んで強引に売りつける例も数多く報告されています。

このような悪質なサプライヤーと安易に提携して利益を得ているリース会社は、トラブルに関して全く責任がないといえない場合もあるでしょう。

また、サプライヤーによる虚偽の説明などの詐欺行為やリース物件に瑕疵があることなどについて、リース会社が知っていながら特に対策もせず提携している場合などにも、リース会社は責任を免れることはできないと考えられます。

このように、リース契約の解約やリース会社への損害賠償請求は非常に困難ですが、全く可能性がないというわけではありませんので、悪質なリース契約に起因するトラブルについては弁護士に相談してみることをお勧めします。

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