フランチャイズのトラブル事例~失敗しないために知っておきたいこと

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弁護士 堀居 真大

平成2年3月 岐阜高校を卒業後、同年4月慶應義塾大学商学部入学
平成6年4月 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属

本部が加盟者に対して、特定の称号や商標等を使用する権利を与えるとともに、加盟社の事業形態について統一的な方法で統制、指導、援助を行い、これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払うシステムのことを、一般的に「フランチャイズシステム」と呼びます。

このフランチャイズシステムを行うことの合意が「フランチャイズ契約」です。コンビニエンスストアや外食店などでよくみられる事業形態です。

加盟者、つまりフランチャイジーにとって、フランチャイズシステムは、既に確立しているブランド力やノウハウの提供を本部から受けることで、未経験者でも開業初期から安定して経営できるという利点があります。また、事業計画をたてやすいので、金融機関等からの融資を受けやすいという利点もあります。

一方で、フランチャイジーは、ブランドイメージを守るために、本部の指示通りに外観や造作の工事を行う必要があり、そうした特別仕様の工事は本部の指示業者に依頼せざるを得ないことが多く、割高な工事となる場合があります。そのため、加盟料などを考えると、開業資金は自分で起業するよりも高額となることが少なくありません。

また、フランチャイジーは、開業後、ブランドの使用や商品の販売権、販売ノウハウ等の提供を受ける代わりに、ロイヤリティを支払う必要がありますが、ロイヤリティの計算式を正確に理解しないまま事業を開始した結果、毎月の高額なロイヤリティに悩まされ、結局事業が継続できなくなるというフランチャイジーも少なくありません。

さらに、フランチャイズ契約においては、フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟者)との間に圧倒的な知識経験の差がある場合が多く、フランチャイズ契約書もフランチャイザーが用意した統一的な内容で定められるのが通常であること等から、契約前、契約期間中、契約終了後を通じて、様々なトラブルが生じます。

ここではフランチャイズ契約にまつわるトラブルとしてどのようなものがあるのかについて見ていきます。

事前の説明と異なり、儲からない

フランチャイズ契約を締結し開業した後に、もっとも生じやすいトラブルの一つが「フランチャイズ契約締結前に受けた説明と異なり、儲からない」という問題です。

加盟者は、当然、利益を得ることを目的に加盟するわけですが、実際に開業してみたところ、フランチャイザーから事前に聞いていた話ほど儲からない、あるいは赤字続きだというケースが残念ながら少なくありません。加盟者にしてみれば、まさに死活問題です。ときには「騙された!」と感じることもあるでしょう。

情報提供義務違反

この問題は、法律的にいえばフランチャイザーの「情報提供義務違反の問題」という観点からとらえることができます。

様々な裁判例上、フランチャイザーは、フランチャイズ契約の締結にあたり、フランチャイジー(加盟者)に対して、客観的かつ的確な情報を提供すべき義務があるとされています。(例えば、クリーニング店のフランチャイズにおいて本部の情報提供義務違反を認めた裁判例など)

このようなフランチャイザーの情報提供義務は、フランチャイザーとフランチャイジーになろうとする者との間に圧倒的な知識経験の差があり、フランチャイジーになろうとする者は、フランチャイザーから提供される情報に頼らざるを得ない側面があることから導きだされます。

損害賠償の請求や違約金の支払い拒絶

フランチャイザーにこのような情報提供義務違反が認められると、フランチャイジーは、これによって被った損害の賠償を請求することができたり、契約終了に伴う違約金の支払いを拒絶することができたりします。(例えば、フランチャイザーからの違約金の請求が否定された例として、コンビニエンスストアのフランチャイズ契約においてフランチャイザーの説明義務違反が認められた裁判例など)

情報提供の仕方が問題となる場面としては、フランチャイザーが積極的に事実と異なることを説明するような場合もあれば、フランチャイザーが持っている有用な情報を提供しない(不開示)場合もあり、どのような場合に情報提供義務違反が認められるのかは大きな問題です。

また、情報提供義務違反があるとしても、どのような範囲で「損害」が認められるのか、さらに、フランチャイジーの側にも落ち度があるとして「過失相殺(損害全額の賠償請求を認めるのではなく、一部だけ請求を認めること)」をすべきではないか、といった点が問題となります。

適切な経営指導を受けられない

フランチャイズの加盟店になってみたところ、フランチャイザーは、募集するときは「豊富なノウハウを提供します」などの謳い文句を掲げて居ながら実際には何の指導やサポートもしてくれず、どのように売り上げを上げて良いかわからないまま、高い初期投資をさせられた借金ばかり残って事業終了となる場合があります。

初期投資のあれこれは本部から買わされることも多く、加盟店としては当然このような状況には納得いきません。

指導援助義務違反

フランチャイザーによる加盟店に対する指導援助は、フランチャイズ制度の中核ともいえます。

フランチャイズ契約をする目的の一つには「フランチャイズ本部(=フランチャイザー)のノウハウを得たい」ということがあります。いろんな指導や援助、サポートが得られることを期待するからこそ、安くない加盟料(ロイヤリティ)を支払うわけです。

こうした指導援助は、フランチャイズ契約の本質の一つであると考えられています。そして、多くのフランチャイザーでは、経営指導を担当する社員が定期的に経営状態をチェックし、問題点を指摘し、改善点を提案するなどします。

他方、フランチャイザーが、本来果たすべき指導やサポートなどの義務を果たさない場合には、加盟店としては、指導援助義務の違反があったとしてフランチャイザーに損害の賠償を請求できる場合があります。

契約書に「定期指導」「研修実施」などを行うことが定められていれば、フランチャイザーの義務違反は明らかです。しかし、そのような規定がなくても、募集時の説明内容やフランチャイズの業務の特性、他の加盟店に対する指導援助の実施状況などによっては、フランチャイザーに指導援助義務が認定されることもあります。

近所に同じフランチャイズの店舗が開店した

自分の店の近隣に同じフランチャイズの店舗が開店したため、売り上げが落ちてしまうとい場合もあります。

一般にフランチャイザーは、こうした事態を避けるため、一定の領域の商圏や地域の出店数に上限を設けることで、フランチャイジーの商圏を保護する条項を契約書に定めていますが、そうした条項を設けないフランチャイザーも少なくありません。

後者の場合には、近隣の競合店によって自店の売り上げが大きく減少するということがあります。

その他契約期間中のトラブル

不当な拘束や不利益を巡る問題

例えば、フランチャイズ契約上、年中無休が条件となっているが、週1回の定休日を設けたいなど契約条件の変更に関するトラブルや、フランチャイザーから加盟店に対して、見切り販売制限などの過大な不利益を与えたり、不当な拘束を行うことによるトラブルがあります。

こうした契約上の拘束をめぐるトラブルの解決のために、特に役立つ場合があるのが独占禁止法による規制です。

公正かつ自由な競争の促進を目的とする独占禁止法は、様々な規制を設けていますが、フランチャイザーの行為が、フランチャイズシステムによる営業を的確に実施する限度を超え、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には、独占禁止法が禁じる優越的地位の濫用や拘束条件付取引等に該当することがあるのです。

その具体的な判断については、公正取引委員会がフランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について(フランチャイズガイドライン)を公表しています。

フランチャイズガイドラインでは、例えば、以下のような行為によって、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合について優越的地位の濫用に該当するとしています。

本部が加盟者に対して、商品、原材料等の注文先や加盟者の店舗の清掃、内外装工事等の依頼先について、正当な理由がないのに、本部又は本部の指定する事業者とのみ取引させることにより、良質廉価で商品又は役務を提供する他の事業者と取引させないようにすること
本部が加盟者に対して、加盟者の販売する商品又は使用する原材料について、返品が認められないにもかかわらず、実際の販売に必要な範囲を超えて、本部が仕入数量を指示し、当該数量を仕入れることを余儀なくさせること

加盟店としては、フランチャイザーの指示に反したり、契約内容に強行的に違反した場合のリスクも慎重に考慮しつつも、こうしたガイドラインなども活用した粘り強い交渉・対応が必要となってきます。

知らない間にフランチャイザーから借り入れをしていた

事業によっては、フランチャイジーが売り上げを全てフランチャイザーに送金し、フランチャイザーが商品代金などを相殺した残額をフランチャイジーに支払う、という方式が採用されている場合があります。オープンアカウントなどと呼ばれ、コンビニエンスストア等で採用されています。

この方式では、月によってはフランチャイジー側の受取金額がマイナスとなる場合もありますが、こうした場合に、フランチャイザーがフランチャイジーに対してマイナス分を自動的に貸付処理する制度となっていることがあります(多くの場合、金利もつきます)。

このようなケースでは、フランチャイジーはいつのまにかフランチャイザーから多額の借金をしていた、という事態が生じます。

解約/脱退トラブル

違約金を巡るトラブル

フランチャイズに加盟したものの解約(脱退)をしたいと考える場合があります。

契約途中で契約を解約する必要が生じた場合に、フランチャイジーがフランチャイザーに解約一時金あるいは違約金を支払うことが契約書に定められている場合が少なくありません。

フランチャイジーとしては、加盟時には解約することなど考えていないので、契約書に記載された解約一時金等が高額であることに気が付かない(あるいは深く考えない)ことが多いですが、そうすると解約時に高額の解約一時金等の支払いに苦しむことになります。

もっとも、解約一時金の定めが置かれていたとしても、全ての場合において有効という訳ではありません。

解約一時金の定めが、個人の営業の自由や経済活動の自由に対する制限として社会的良識や正常な商慣習に照らして合理的に必要と認められる範囲を超える場合には、その全部又は一部が無効とされることがあります。(詳しくはこちら→フランチャイズ契約における解約一時金や違約金の意味

一方的な解約/更新拒絶

他方で、フランチャイズ契約の違反があるなどとしてフランチャイザーから一方的に解約されたり、フランチャイズ契約の更新を拒絶されたりする場合があります。

フランチャイズ契約は継続的契約関係であり、特にフランチャイジー(加盟店)は初期投資に自己資金を費やし長い期間を経てノウハウを蓄積しているのですから、軽微な違反を理由に解除できてしまうとなれば、フランチャイジーの被る損害は深刻です。

こうした観点から、裁判例の多くは、解除にあたって、契約当事者間の信頼関係が破壊されるような特段の事情が必要としています。(詳しくはこちら→フランチャイズ契約の解約を言い渡されたら

フランチャイズ契約終了後の競業避止トラブル

フランチャイズ契約が終了した後にもトラブルが生じる場合があります。

多くのフランチャイザーは、フランチャイジーがフランチャイズ契約終了後に同じ業種の営業を行うことを禁じる条項を契約書に定めます。これを「競業避止義務」といいます。

こうした競業避止義務条項は、フランチャイジーの職業選択の自由を制約するものなので、場所や期間は無限定ではなく、一定の範囲(例えば契約終了後2年間、同一県内、など)とするのが一般的ですが、一部のフランチャイザーは極めて厳しい競業避止義務を契約書に定めていることがあります。

このような厳しい競業避止義務は、苦労して培ったノウハウを契約終了後の業務に生かしたいと考えるフランチャイジーにとって大きな不利益となります。制限の程度があまりに重く、営業の自由を不当に制限するものである場合には、公序良俗違反として無効となる場合があります。(詳しくはこちら⇒フランチャイズ契約と競業避止義務

フランチャイズトラブルの防止/解決のために

これまで見てきたような様々なトラブルを避けるには、どうすれば良いでしょうか。

まずは、フランチャイズ契約書を良く読むことです。実は、上記のようなフランチャイジーに不利益な規定は、フランチャイズ契約書に全て記載されています。契約書を精読すればこれらのことはフランチャイズ加盟時に把握することができます。

ところが、フランチャイズ契約書は一般的に頁数が膨大で、難しい言い回しが多用されていることも多いので、一読して内容を理解することは困難です。

にもかかわらず、加盟希望者に対するフランチャイザーの説明が十分でない場合が珍しくありません。むしろ、加盟者を増やすために意図的にフランチャイジーに不利益な説明をしないフランチャイザーもいます。

こうした悪質なフランチャイザーが増えていることから、近年、中小企業庁や経済産業省も「フランチャイズ事業を始めるにあたって」との文書を作成して、注意を呼びかけています。(≫http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/sonota/19fy_franchise.pdf

ですので、これからフランチャイズ事業を始めようとする方は、まずは自分で契約書をしっかり読み、疑問点はフランチャイザーに十分な説明を求めるなどして、フランチャイズ契約の内容を十分に把握した上で事業に加盟されるべきです。

また、既に加盟をしたという方にとっても、「契約書ではどうなっているのか」をきちんと確認することが出発点になります。

その上で、上記でも一部紹介したように、たとえ契約書に記載がされていても、その記載どおりの効力が認められない場合や、独占禁止法等による規制を受ける場合などもありますので、こうした観点から、解決の道筋を探っていくことになります。

とはいえ、契約書の内容は分かりづらく、問題をどう整理すれば良いのかも分からない場合も多いでしょう。そんなときは、弁護士などの専門家に早めに相談されることをお勧めします。

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