最低賃金の引き上げと下請法

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弁護士 堀居 真大

平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属
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令和3年9月から、最低賃金が引き上げられた関係で、私の会社の社員の従業も引き上げざるを得なくなりました。その結果、人件費が増加したので、納品している製品の単価も増加しないと儲けが出なくなりました。

そこで、製品を納めている取引先の会社に相談しようと出向いたのですが、その会社は「単価は決まったことだから」「あなたが作らないならよそに頼む」などといって、全く交渉に応じてくれません。

取引先はうちとは違って大会社なので、最低賃金などは関係ないのかもしれませんが、うちは単価を上げないとやっていけません。どうすればよいのでしょうか。

目次

最低賃金の引き上げについて

令和3年9月8日に、最低賃金法が定める全国の最低賃金が引き上げられました。

特に今回の引き上げは、全国平均が時給換算で約30円増加するもので、過去最大の上げ幅といわれています。しかも、政府は「より早期に平均1000円をめざして引き上げに取り組む」と表明しており、今年だけでなく来年以降も、最低賃金の金額が増加していくことが予想されます。

このような急激な人件費の増加は、特に中小企業にとって大きな負担となります。とはいえ、違反すると罰則があり、労働紛争にもなるだけでなく必要な労働力の確保も難くなるので、会社としても最低賃金を遵守せざるを得ません。

こうしたコストの増加を乗り越えるためには、会社としては納品する製品やサービス代金などを増額せざるを得なくなります。

取引業者が対応してくれない場合

しかし、こうした単価の引き上げは、飲食店など一般消費者を対象とする会社の場合は容易ですが、部品や製品などを特定の取引先の会社に納品しているような会社の場合は、容易ではありません。取引先の会社が単価引き上げに応じてくれない場合があるからです。

特に、相手とこちらの力関係に大きな差がある場合、下請法でいうところの「親事業者」と「下請事業者」との間においては、これらの問題は顕著になります。というのも、下請事業者にとって親事業者は重要な取引先であることから、親事業者と対等な立場で交渉することができず、結果として親事業者の言いなりになることが多いからです(いわゆる「下請けいじめ」です)。

親事業者と価格交渉ができない下請事業者は、違法と知りながら、会社を倒産させないようにするため、違法と知りながら最低賃金法を下回る賃金で雇用せざるを得なくなるでしょう。

こうしたことが常態化すれば、最低賃金法が形骸化してしまいます。

アクションプランを利用しよう

そこで公正取引委員会は、下請法上の「親事業者」と「下請事業者」の間で、親事業者のいじめや嫌がらせによって下請事業者に不当なしわ寄せが生じないように、中小事業者等取引公正化推進アクションプランを制定し、いろいろな下請事業者の保護施策を打ち出しています。

上記のような問題が生じたときは、まずは公正取引委員会に電話で相談してみましょう(フリーダイヤル「0120-060-110」、土日を除く10:00~17:00)。

電話してみて、電話では説明がなかなか難しいということであれば、オンラインでの相談を申し込むこともできます。

相談の結果、親事業者の交渉拒否や価格維持の強要が、下請法の「買いたたき」に該当するということになれば、下請法違反となります。この場合には、公正取引委員会に対して、親事業者を調査したり検査したりするよう要請したり、場合によっては「下請法違反である」と告発することができます。下請法違反のペナルティーは罰金だけでなく、会社名を公正取引委員会のHPなどで「公表」されたりすることもあるので、とても強い効果があります。

さらに、こうした下請法違反によって下請事業者に損害が生じている場合には、「下請法違反」を理由として損害賠償を請求することもあり得ます。このあたりは、弁護士と相談したうえで決めるのが良いと思います。

注意点

このように、最低賃金法の引き上げを経緯として、行政庁、特に公正取引委員会は、これまで以上に、価格交渉における「下請けいじめ」が生じないように、下請事業者を強力にバックアップしてくれるようになりました。こうした支援を得て、下請事業者も安心して最低賃金を法の基準通りに引き上げることができるようになります。

もっとも、こうした支援や下請け法の適用は、取引先との関係において、あなたの会社が「下請事業者」、相手の会社が「親事業者」に該当するための要件を満たす必要があります。

下請事業者が定める資本金の基準が満たされていないと、下請法の適用や上記の行政によるバックアップが受けられないのでご注意ください。

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