「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」とは

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弁護士 堀居 真大

平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属

公正取引委員会が、令和3年9月8日に「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」をとりまとめ公表しました。

本アクションプランは、中小企業が取引先から買い叩きなどの不当なしわ寄せを防ぐための対策をとりまとめたもので、人件費や原材料価格の上昇に悩む中小企業にとって強い味方となるものです。

以下、内容について説明します。

背景事情

2021年10月頃以後、全国の最低賃金が引き上げられることが予定されています。引き上げ後の最低賃金は都道府県によって異なりますが、その引き上げ幅は2002年度以降最大規模と言われています。

加えて、コロナ禍などが原因で、一部の原材料価格が上昇しています。

人件費や原材料費が上昇すれば、事業規模が大きいとはいえない中小企業としては、取引価格にそれらの増加コストを上乗せして、取引価格を値上げしてもらうより他ありません。

しかし、大企業などの親事業者に納品する下請け企業である中小企業は立場が弱く、値上げ交渉は容易ではありません。ただでさえコロナ禍などによって日本経済が停滞しており、親事業者の事業も順調とは限りません。そのような場合には、親事業者が取引価格の値上げに応じてくれる可能性は低く、むしろ交渉拒否や値下げ要請などの形でしわ寄せが中小企業に押し付けられる可能性があります。

こうしたことから、経産省は、2021年9月を、中小企業が人件費の増加分を取り引き価格に上乗せして親事業者と交渉することを推奨する「価格交渉促進月間」と定め、大企業などに対し、中小企業との価格交渉に応じるよう協力を求めています。しかし、それだけでは中小企業の立場の弱さはなかなか改善されません。

こうした背景から、経産省に続いて公正取引委員会も、大企業に下請法の遵守を求めるため、別の言い方をすれば大企業による価格交渉拒否や値下げ要請などの「下請けいじめ」を防ぐため、「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を定め、これを広く公表して、中小企業が不当な不利益を被らないようにしたのです。

内容

内容は大きく以下の3点に分類されます。

下請法などの執行強化

最低賃金引き上げによる人件費の増加や、原材料価格の上昇などを理由とする、中小企業の取引価格の値上げ交渉に対し、これに不当に応じないなどの行為を「最低賃金引上げ等を勘案しない下請代金の不当な設定」に該当するとして、下請法違反行為に対して「厳正に対処する」との姿勢を示しました。

と同時に、下請法を順守するよう親事業者に対して注意喚起文書などによって要請し、労務費や原材料価格上昇に関する情報収集を行い、下請法遵守に必要な体制を強化するとのことです。

相談対応の強化

取引先の大企業に対する中小企業の立場が弱いことから、不当なしわ寄せに関する下請け相談窓口が設置されました(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/sep/210908files/210908_2.pdf)。

加えて、申し込みがあればWEB会議システムを用いて、中小事業者等のオンライン相談会を実施してくれます。

不当なしわ寄せ防止に向けた普及啓発活動の拡充・強化

「最低賃金の引上げにより労務費等のコストが大幅に上昇した下請事業者から単価の引上げを求められたにもかかわらず,親事業者が一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注すること」が,下請法上の「買いたたき」に該当し得ることについて、公正取引委員会はQ&Aを作成するなどして、考え方を明示し、周知を徹底する方針を打ち出しました。 

さらに同委員会は、こうした下請法に関する考え方等を分かりやすく示した新しい動画を作成し,WEB上で公開を行うことを予定しています(現時点ではまだ作成されていません)。

本アクションプランによって可能となること

このように、これまでは抽象的で曖昧だった「買いたたき」について、公正取引委員会は「人件費や原材料費の上昇を理由とする価格交渉に応じない行為は下請法上の買いたたきに該当し得る」とのスタンスを明確に打ち出しました。

さらに、経産省も令和3年9月を「価格交渉促進月間」と定め、「下請けGメン」が約2000社に対して重点的ヒアリングを行い、かつ数万社に対してアンケートを行い、新聞広告やポスターなどで価格交渉月間について広報を行う予定です。

このように、法律面でも、行政面でも、大企業が中小企業との値上げ交渉を「拒否し辛い」状況が構築されつつあります。「価格の一方的値下げ」だけでなく「値上げ交渉の拒否」も、下請法に反し違法となることが周知されつつあります。

下請法違反に対する罰則は、単なる罰金などに留まらず、公正取引員会のHPへの掲載を伴う「勧告・公表」なども行われ得ることから、大企業(親事業者)も下請法違反の行為は避けたいと考えるはずです。

なので、もし不当な価格交渉拒否があっても「取引先だからしょうがいない」と諦める前に、前期の下請け相談窓口に相談してみることをお勧めします。

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