有給休暇取得の義務化

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弁護士 堀居 真大

1994年 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
2011年 弁護士登録(愛知県弁護士会)/名古屋第一法律事務所所属

 

交通事故を中心とした一般民事を広く取り扱う。弁護士になる前は損害保険会社で勤務しており、中小企業や事業者の目線を大切にしたいという気持ちから、商取引全般、特に中小企業や個人事業者に関する法的トラブルに積極的に取り組んでいる。

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働き方改革法というのが成立したので、平成31年4月から、すべての会社が、従業員に毎年5日以上の有給休暇を消化させなければならなくなったと聞きましたが、本当でしょうか。

目次

働き方改革関連法とは

「働き方改革関連法」という法律が成立し、2019年4月1日から順次施行されています。

そして、この法律のうち「年次有給休暇の確実な取得」についてはすでに2019年4月1日から施行されておりこれによって使用者は「10日以上の年次有給休暇が付与される全ての従業員」に対して「毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える必要がある」ことになりました。

なお、働き方改革関連法のうち、例えば「36協定の罰則付き上限規制」などについては、中小企業の適用は2020年4月からと猶予されていますが、この「有給休暇取得義務」については猶予期間がありません。つまり、全ての使用者に対して既に「年次有給休暇の確実な取得」の義務が生じているのです。

対象となる労働者

といっても、すべての従業員が対象ではありません。対象となるのは「年10日以上の有給休暇の権利がある従業員」です。

「うちの会社は有給休暇の制度が無いから大丈夫」という考え方は、間違いです。というのも、会社に制度があろうとなかろうと「労働者の勤続が6ヶ月を超え、かつ労働日の8割以上出勤した」場合には、その従業員には法律によって年10日以上の有給休暇を取得するからです(労働基準法39条)。

労働基準法39条の詳しい説明は省略しますが、ほぼ毎日仕事に出ている勤務歴6か月以上の従業員に対しては、基本的に有給休暇を取得させる義務が生じていると考えてよいです。

取得させなかったらどうなるか

使用者が従業員に有給休暇の指定をしなかった場合には、30万円以下の罰金が課されることがあります。これは、従業員が「有給休暇なんていらない」などと言っている場合でも同様です。

なお、「5日の取得」という要件は、全従業員の平均ではありません。一人でも「年5日」の有給休暇を取得していなければ、違反になってしまいますのでご注意ください。

そして、前述の30万円以下の罰金という罰則は「従業員1人あたり」です。10人の従業員に取得義務違反があれば、罰金の最大額も10倍になりますので、注意が必要です。

経営者として注意すべきこと

これまでは、多くの会社では有給休暇の取得は従業員の自発的な意思に任せてきました。従業員が有給休暇を取得しなくても「それは従業員の自由意志」として、特に問題はありませんでした。

しかしこれからは、経営者が積極的に従業員の有給休暇取得状況を管理しなければなりません。管理簿を作成し、管理担当者に状況を把握させ、有給休暇を取得していない従業員に対しては経営者から積極的に働きかけて有給休暇を取得させる必要があります。

もちろん、闇雲な有給休暇の指定は、従業員や会社にとってかえって不利益となる場合があります。なので、有給休暇を指定する際には、十分な期限の余裕をもって(年度末に慌てて、というのは好ましくありません)、当該従業員の業務状況や本人の意向を聴取し尊重することが望ましいでしょう。

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