弁護士 山本 律宗
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中小零細企業にとって売掛金等の債権の回収は,きわめて重要な事柄です。では,どうしたら売掛金等の債権回収を円滑に行うことができるのでしょうか。弁護士に相談することのメリットはどこにあるのでしょうか。これらの点について,述べていきたいと思います。
任意による債権回収の方法
まず,債権回収において重要なことは,証拠がきちんと残っているかどうかです。
いくら口頭で約束をしたと言っていても,相手方がそんな約束はしていないといわれてしまえばそれで終わりです。口頭での約束を裏付ける証拠が必ず必要になります。
これは,交渉段階においても変わるところはありません。ですので,証拠となりそうなメールのやり取りや振り込みの記録や領収書等については,きちんと作成し,保管していくことが肝要です。
次に,証拠がある場合には,相手方に対して内容証明郵便にてこちらの請求をなすことが通常です。これは,後々,相手方から「そんな請求受けたことない」,「そんな内容の請求はなされてことがない。」などと言い訳をさせないためでもあります。
弁護士が受任する場合には,依頼者との相談の上,証拠の有無を確認し,請求に根拠があると判断した場合には,内容証明郵便にて支払いを求めるなどの方法をとります。
時々,誤解がありますが,内容証明郵便自体には支払いを強制する力はありません。ただし,弁護士をつけてまで債権回収を図ろうとする姿勢を示し,また,ゆくゆくは裁判所を通じた債権回収が相当程度予測されるので,任意の支払いを促す効果は期待できるでしょう。
任意による債権回収を効果的なものとするためにやっておくべきこと
相手に支払い等を約束させた場合,必ず書面にしておきましょう。金銭的な請求を目的とする場合には,公正証書で作成し,その中で強制執行されても異議はない旨の文言を入れることにより,直ちに強制執行ができるようにしておくことが望ましいです。
また,当然ですが,債権回収をしようにも相手方に資力など債権を実現する能力がなければ債権回収は出来ません。そこで,きちんと連帯保証人や物上保証(不動産への抵当権の設定など)を取っておくことが重要になってきます。
弁護士に依頼するメリット・デメリット
債権回収に当たり何が何でも弁護士に相談することが望ましいとは限りません。
確かに,弁護士が付くことで債権回収に対する本気度が伝わり,当事者同士よりも説得力がある(法的裏付けがなされており,かつ,訴訟に耐えるだけの証拠がある可能性が高い。)ため,当事者同士よりもスムーズに債権回収が行える可能性はあります。また,相手方が反論をしてきたときもそれに対して法的に的確な反論を行うことができますし,債権回収の見通しをもって対応をすることも可能になるでしょう。
他方で,こちらが債権回収に本気であることを示すことは,場合によっては相手方との関係を修復困難な状態に陥らせる可能性があります。また,お手上げに近い場合,弁護士が請求をかけることで,相手方が破産等の手続きを取る可能性もあります。そのようなデメリットを追ってもなお,回収すべき債権であるかは検討すべきでしょう。
いずれにしても,相談するだけであれば,費用もそれほど掛からないので,どのような選択肢を取るにしても弁護士に相談をするのが望ましいでしょう。