保証人をとるときに注意すべきこと

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弁護士 山本 律宗

2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属

事業者にとって債権を確実に回収することは,極めて重要な点です。

債権の回収を確実にするための方策は,種々ありますが,その一つが保証制度です。保証人になるとは,債務者が負担する債務の履行がなされない場合,その債務の履行を保証した保証人がその履行の責任を負うということを意味します。

例えば,債権者から債務者が金200万円を借りており,債務者が金200万円を弁済しない場合,債権者は保証人に対して200万円を支払うように求めることができ,保証人はこれに応じなければならないということです。 このような保証制度は,債務を担保する目的で利用されるのですが,以下では,保証人をとる際の注意点について述べておきたいと思います。

目次

書面で作成をしているか?

保証制度を利用するためには,債権者と保証人との間で,主たる債務者がその債務を履行しないときに,その履行をする責任を負うことを合意する,保証契約が必要となります(民法446条1項) 。

そして,その保証契約は,書面でなされなければなりません(民法446条2項)。インターネットを利用した電子商取引等において,保証契約が電磁的記録によってなされた場合には,これを書面によってなされたものとみなされます(民法446条3項)。

このとき,保証意思の確認は必ずしておきましょう。債務者は,債権者から資金の融通等を受けたい一心で保証人の承諾を得ずに保証書や保証契約書を提出してくることがあります。この場合,いざ債務の履行を保証人に対して求めた際,保証契約の無効等を主張されて,支払いを拒まれては何の意味もありません。ですので,保証契約を締結する際には保証人を目の前にして保証書や保証契約書を作成するべきです。それが叶わないとしても最低限電話での確認はすべきでしょう。

保証人の要件は充足しているか?

債務者が保証人を立てる義務を負う場合には,その保証人は,①行為能力者であること,②弁済をする資力を有することの2つの要件を満たしている必要があります(民法450条1項)。

そして,保証人が①又は②の要件を欠くに至った時は,①及び②の要件を満たす者に変えるよう債権者は,債務者に対して求めることができます(民法450条2項)。 ただし,債権者が保証人となる者を指定したときはこの限りではありません(民法450条3項)。

保証人を付けてもらえば,債務者が支払えなくても,保証人に対して請求することができるのですが,保証人がどのような財産を有しているのかを債権者が把握していなければ,画餅に帰す可能性もあります。そこで,保証人の資力調査はしっかりとしておくべきでしょう。どの程度,資力調査を行うかは,保証人との関係次第かも知れませんが,少なくとも所有不動産の登記簿謄本や所有自動車の登録事項証明書,取引銀行については確認をしておくべきと思います。

通常の保証か,連帯保証か

一般的に「保証人になる」と言った場合,連帯保証を指していることが多いでしょう。では,保証に「連帯」と付くと何が変わるのかについて,見ておきたいと思います。

通常の保証の場合,債権者から請求された保証人は,まず主たる債務者に催告せよと主張することができます(これを催告の抗弁権といいます)。つまり,保証人は,あくまでも主たる債務者が払えない場合のためにいるのだから,いきなり保証人に請求することは許されず,まずは主たる債務者に催告しなければならないということです。

また、債権者が主たる債務者に催告をした後であっても,保証人が,なお,主たる債務者に弁済の資力があり,かつ,それに対する執行が容易であることを証明したときは,債権者は,まず主たる債務者の財産に執行しなければなりません。(これを検索の抗弁権といいます)。これも、保証人はあくまでも主たる債務者が払えない場合にいるということから導かれる権利です。

他方,連帯保証の場合,保証人には,上で述べたような「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」はありません。ですので,債権者は,このような抗弁権を行使されることなく,連帯保証人に対して債務の履行を請求することができます。

また,時効との関係でも,現行民法では連帯保証人に対する履行請求の効果が主たる債務者に対しても及びます。そのため,連帯保証人に対して履行の請求をすることで,連帯保証人にも時効の中断の効力が生じることになります。ただし,この点については,民法改正で異なる取扱いとなるため,今後,利点とはいえなくなってしまいます。

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