特別支配株主の株式等売渡請求について

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弁護士 山本 律宗

2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属
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株式等売渡請求とは

多数派株主が少数派株主を締め出すための手法として,特別支配株主の株式等売渡請求があります。

この請求は,株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を直接又は子会社によって間接的に有する株主(特別支配株主)がその株式会社(対象会社)の株主総会決議を要することなく,他の株主の全員に対し,その有する株式の全部を売り渡すことを請求することができるというものです。

特別支配株主が株式売渡請求と併せて,対象会社の新株予約権や新株予約権付き社債についても売渡請求をすることができるとしています。

この制度を利用することにより,少数派株主のキャッシュアウトを迅速に行うことができます。

株式等売渡請求の手続

以下では,手続の概略を見てみましょう。

第1に,この制度を利用するためには,特別支配株主でなければなりません。すなわち,株式会社の総株主の議決権の10分の9以上の株式を直接又は子会社を通じて保有する必要があります。

仮に,必要数の株式が手元に無い場合には,協力的な株主に株式を譲渡してもらうなどをする必要があります。

第2に,特別支配株主は,株式等売渡請求をしようとするときは,対象会社に対し,株式売渡請求をする旨及び必要事項を記載します。

対象会社が種類株式発行会社である場合には,特別支配株主は,対象会社の発行する種類の株式の内容に応じ,売渡株主に対する対価として交付される金銭の割当に関する事項について,売渡株主の種類ごとに異なる取扱いを行う旨及び異なる取扱いの内容を定めることができます。

第3に,特別支配株主は,株式等売渡請求につき対象会社の承認を受けなければなりません。

対象会社が取締役会設置会社である場合は,承認するか否かの決定は取締役会の決議により,取締役会非設置会社である場合は,取締役の過半数をもって決定しなければなりません。種類株式発行会社は,ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがある時は,対象会社の株式等売渡請求の承認は,その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ,その効力は生じません。

第4に,対象会社は,特別支配株主の株式等売渡請求を承認したときは,取得日の20日前までに,売渡株主に対し,①承認をした旨,②特別支配株主の氏名又は名称及び住所,③株式等売渡請求決定事項を通知しなければなりません。この費用は,特別支配株主が負担します。

第5に,対象会社は,売渡株主への通知の日又は広告の日のいずれか早い日から非公開会社である場合には取得日後1年,公開会社の場合には取得日後6ヶ月を経過するまでの間,①特別支配株主の氏名又は名称及び住所,②株式等売渡請求決定事項,③株式等売渡請求の承認をした旨,④その他法務省令で定める事項を記載した書面を本店に備え置き,売渡株主による閲覧等のために供さなければなりません。

第6に,特別支配株主は,取得日に売渡株式の全部を取得します。

株式等売渡請求の撤回

特別支配株主は,株式等売渡請求について対象会社の承認を受けた後は,取得日の前日までに対象会社の承諾を得た場合に限って,売渡株式の全部について,株式等売渡請求の撤回をすることができます。

この撤回をするためには,対象会社が承諾する必要があります。対象会社が承諾をしたときは,遅滞なく,売渡株主に対し,撤回を承諾した旨を通知又は公告しなければいけません。

売渡株主等の救済制度

売渡株主等の保護のための制度として,①対価が対象会社の財産の状況などに照らし著しく不当である場合の差止請求,②取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に裁判所に売買価格の決定の申立てができること,③売渡株式等の取得の無効の訴えができます。

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