譲渡制限株式に相続が発生した場合にどう対応すべきか

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弁護士 山本 律宗

2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属

中小零細企業の多くは家族経営であり,対外的に開けた会社でない場合が多くなります。そのため,従来の株主とは何らの関係の無い赤の他人が株主になることの方が問題である場合があります。そこで,譲渡制限株式制度があるわけですが,譲渡制限株式を有する株主が死亡し,相続が発生した場合はどうなってしまうのでしょうか。

株主権は,相続の発生に伴い,民法が定める相続基準にしたがって,その権利の帰属が決定するのが原則です。しかし,譲渡制限株式の場合には,その原則を修正する仕組みがあります。以下で,具体的にみていきましょう。

目次

会社の側からの対応策

会社法174条は,「株式会社は,相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し,当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。」としています。これを相続人等株式売渡請求といいます。

同条にあるように定款に定めることにより,相続人等株式売渡請求が可能となるわけですが,定款の定めの他にも,請求しようとする度に,株主総会の決議によって請求する株式の数,その株式の所有者の氏名,名称を定めなければなりません。その上で,当該株主が当該株式を取得したことを知った時から1年以内に,当該請求をなさなければなりません。

このときの株主総会は,特別決議(会社法309条2項3号)です。当該決議にあたり,会社が相続人等株式売渡請求をかける相手方である株主は当該決議に参加することはできません。

会社が買い取る際の金額については,会社と株主との間で協議により定めます(会社法177条1項)。協議が整わない場合には,当該会社も当該株主も相続人等株式売渡請求があってから20日以内に裁判所に売買価格決定の申立ができることになっています。

なお,会社は,相続人等株式売渡請求をなした後,当該会社と当該株主との間の協議が整うか又は裁判所による価格決定がなさるまでの間は,当該請求を撤回することが可能です。

株式の売渡請求が問題となる場合としては、他にこのような場面もあります。
特別支配株主の株式等売渡請求について

会社の経営に巻き込まれたくない株主側の対応

以上のように,会社が株主に対して積極的に相続人等株式売渡請求を行ってくるのであれば良いのですが,当該会社が当該請求をなさない場合に,当該株主の方から当該会社の株式を手放す方法はあるのでしょうか。

その方法としては,相続放棄,限定承認,株式を取得しないような遺産分割などがありますが,それ以外に以下の様な方法も考えられます。

会社の株式を取得した株主は,購入を希望する第三者へ売却をしてしまいます。その後,当該第三者と当該株主が連名で,当該会社に対して当該譲渡制限株式の取得の承認を請求します。

すると,当該会社は,譲渡を承認するか又は自社で買い取るかを決定しなければなりません。譲渡が承認されれば,当該株主は,当該譲渡制限株式を手放すことができた上,当該第三者から売却代金を確定的に受け取ることができます。また,当該会社が譲渡承認拒否の場合には,当該会社が買い取るため,当該株主は売却代金を受け取ることができます。

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