株主間契約の活用

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弁護士 山本 律宗

2014年12月 弁護士登録(愛知県弁護士会所属)/名古屋第一法律事務所所属
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株主間契約とは

株主間契約とは,会社の株主が相互の間で締結する契約です。多くの場合、会社法の定めに縛られることなく,会社の運営等をすることを目的として利用されます。

また,ベンチャー企業において活用されることもあります。

ベンチャー企業は,銀行等の金融機関に頼る一般的な中小零細企業とは異なり,ベンチャーキャピタルなどの投資家からも出資を仰ぎ,最終的には株式を公開するなどして一般投資家から資金を集めるところにたどり着くことを目指すなど、高いリスクも恐れず,成長を図ろうとします。

そして、優れた技術やノウハウを持ち,株式を公開する時までは経営権を維持することを希望するベンチャー企業の社長と,将来のリターンを期待して多くの資金を提供しつつ会社を支配することなく支援する投資家との関係において,株主間契約が使用されることがあるのです。

こうした株主間契約の有効性と限界について触れつつ,その活用方法についてみていきたいと思います。

株主間契約の締結の自由と限界

株主間契約において定められる合意の内容は,基本的に自由です。ただし、株主間契約を締結していても,これを強制することには困難を伴います。

例えば,議決権を行使することに関して一定の制限を設けたとしても,株主総会において制限を受けた側が議決権を行使してしまえば,それが無効となることはなく,議決権行使としては有効とみられてしまいます。

損害賠償請求の対象とはなりうるかもしれませんが、損害をどのように立証するかなどの問題もあります。

議決権拘束条項を株主間契約において定める意味

議決権拘束条項とは,株主間において,議決権の行使について,一定の条件の下に拘束を設けるものです。

こうした議決権の拘束は,「株主総会において議決権を行使することができる事項」について異なる定めをした種類株式の発行(会社法108条1項3号)や、公開会社でない株式会社であれば、議決権について,株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定款で定める(会社法109条2項)といった会社法の規定の利用により実現することも可能ではあります。

しかし,定款によって議決権の行使に制限を加える場合,定款によって一括して行わなければならず,また,内容を公開しなければならないため,実際上、利用には困難が伴います。

これに対して、株主間契約においてそのような制限を加えることは,自由で,公開する必要もありません。この点において、株主間契約によって 議決権拘束条項を 定めるメリットがあるといえます。

議決権拘束条項の有効性

既に述べたように,株主間における合意に基づいて議決権を拘束する条項を設けることは自由で有り,契約として有効です。

ただし,議決権拘束条項に違反する議決行為は,株主総会の瑕疵とはなりえず,債務不履行に基づく損害賠償請求の対象となるに過ぎません。

もっとも,前述のとおり,損害の立証は困難を極めるため,損害賠償の予約の約定を行っておく必要があります。あるいは,議決権拘束条項に違反する議決行為をした者に自らの株式を買い取る義務を負わせる旨の規定を設けることも有効でしょう。

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