譲渡制限株式のメリット

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弁護士 堀居 真大

平成2年3月 岐阜高校を卒業後、同年4月慶應義塾大学商学部入学
平成6年4月 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属

譲渡制限株式について

新しく株式会社を設立する際には、ほとんどの場合には株式の譲渡制限に関する規定を定めます(株式の譲渡制限とは何かについては、こちらをご参照ください。▼株式譲渡制限とは

会社のすべての株式が譲渡制限株式である会社のことを「非公開会社」といいます。一方で、一部でも譲渡制限株式ではない株式がある会社は「公開会社」と呼ばれます。

非公開会社であることのメリット

すべての株式が譲渡制限株式である会社、つまり非公開会社においては、一部の手続きが簡略化されるというメリットがあります。具体的な内容は以下の通りです。

取締役会を設置しなくてもよい

公開会社は、取締役会と監査役を必ず設置しなければなりませんが、非公開会社においては設置する義務はありません(もちろん設置しても構いません)。なので、取締役の人数も、取締役会を設置するのであれば3人の取締役が必要ですが、非公開会社の場合は取締役は一人でも構いません。

このことによって、無理に形だけの役員を設置する手間もなく、意思決定を迅速に行うことができます。

取締役の任期が最大10年まで伸ばせる

取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社の場合は10年まで延ばすことができます(ただし、定款にそのように定めておく必要があります)。

中小企業の場合は、取締役が頻繁に交代することはあまりありませんが、公開会社だと取締役の任期が2年なので、2年ごとに株主総会にて選任手続をしなければなりません。しかし、非公開会社の場合は、あらかじめ定款に定めてさえおけば、取締役の選任手続きは10年ごとにすればよく、手間が省けます。

株主総会招集手続きが1週間前でよい

株式会社においては、会社は定時株主総会を、毎年招集しなければならないことになっています(会社法296条)。定時株主総会以外でも、会社法が定める重要な手続き、例えば役員の選解任や資本金の額の変更等については、臨時で株主総会を開いて決議を得なければなりません(会社法309条等)。

そして、株主総会はただ開催すれば良いのではなく、株主総会の日の2週間前までに、議題等を記載した招集通知を株主へ発送しなければなりません。

この「招集通知の発送の期間」の規定は厳しいもので、もし期間までに招集通知を発送していなければ、せっかく開催された株主総会もあとで取り消されてしまうことが有り得るのです。

こうした厳しい招集通知の発送期間の要件も、非公開会社にしておけば、株主総会日の2週間前ではなく1週間前となります(取締役会を設置していなければ、定款で定めることでさらに短縮することも可能です)。

非公開会社の利点

この他にも、株券の発行は株主から請求されてからでよい、取締役会を設置しても会計参与を置けば監査役は設置しなくてよい、定款で取締役を株主の中からしか選べないように定めることができるなど、手続き上の利点が多数あります。

これらはいずれも、会社の意思決定を迅速にして、手間やコストを削減するものですので、特に公開会社にしておかなければならない理由がないのであれば、非公開会社にした方がメリットが大きいといえます。

株式の譲渡が制限されることのメリット

非公開会社であることとは別に、株式の譲渡には株主総会あるいは取締役会の承認が必要としておくことにもメリットがあります。

それは、いつのまにか株式が第三者に譲渡されていて、第三者から会社を乗っ取られたり、経営に参加されたりすることを防ぐことができるということです。経営者の方が全株式を保有していれば問題はありませんが、ご家族や共同経営者が株式の一部を保有している場合には、株式譲渡制限の規定によって、知らない第三者が株主になることを防ぐことができます。

その他にも、株式の散逸を防ぐことで事業承継が容易になるということがあります。株式がバラ売りされて株主が多数になると、株主の管理や招集通知発送のコストが増えてしまうということもあるでしょう。

株式は、会社の経営権に直結する大切な権利です。知らないうちに第三者に渡ってしまうのを防ぐことには重要なメリットがあります。ほとんどの中小企業において株式譲渡制限が規定されているのも、このようなメリットがあるからです。

株式譲渡制限の規定は会社設立後に変更することも可能ですから、新たに会社を設立される際には、まずは株式譲渡制限を定款に定められることをお勧めします。

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平成2年3月 岐阜高校を卒業後、同年4月慶應義塾大学商学部入学
平成6年4月 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属