クリーニング店のフランチャイズにおいて本部の情報提供義務違反を認めた裁判例

フランチャイズにおける情報提供義務違反を巡っては、そもそも情報提供義務違反があるのか、(違反があるとして)加盟店に認められる損害とは何か、加盟店にも落ち度があるとして過失相殺をすることができるのかといった点が問題になります。

ここでは、フランチャイザー(本部)の売上試算、予測は客観的かつ的確ではなかったとして情報提供義務違反を認めた東京高裁平成11年10月28日判決を見てみたいと思います。

事案の概要

本件で原告となったのは、クリーニング店の経営を目的とするフランチャイズの加盟店です。

原告は、フランチャイズ契約を締結してクリーニング店を開業した後、業績が上がらず、本部の指導を受けても一向に業績が好転しなかったことから、約9ヶ月で閉店することになってしまいました。

そこで、本部に対して、フランチャイズ契約を締結するに際して本部が提供した売り上げ予測等の情報が適正ではなく、「適正な情報を提供すべき信義則上の義務違反がある」として、開業費用等について損害賠償を請求する訴えを起こしたのです。

一審判決は、本部が提供した売上等の予測は特に適正を欠くところはないとして請求を棄却しましたが、これに対して原告が控訴しました。

保護義務違反

まず、裁判所は、一般論として、フランチャイズ・システムにおいては、店舗経営の知識や経験に乏しく資金力も十分でない者がフランチャイジーとなることが多く、専門的知識を有するフランチャイザーがこうしたフランチャイジーを指導、援助することか予定されている点を指摘し、

フランチャイザーはフランチャイジーの指導援助に当たり、客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っている

と述べました。

そして、本件でも、契約に先立って本部(被控訴人)が加盟店(控訴人)に対して示した情報が客観的かつ的確な情報でなく、これにより加盟店のフランチャイズ・システムへの加入に関する判断を誤らせたといえる場合には、本部は、信義則上の保護義務違反により、加盟店が被った損害を賠償する責任を負うとしました。

本部が示した情報の適否

そうすると、問題となるのは、本部が示した情報が「客観的かつ的確な情報」だったのか、という点です。

本部(被控訴人)は、店舗の損益分岐点売上と必要客数を、オーナー給与月額40万円の場合で、月額251万9000円、日平均53人等と試算して、加盟店(控訴人)に対して、月額40万円程度の収益は見込めるとする資料を交付していました。

しかし、実際には、開業後の実績は、売上が一番多い月でも約98万円で、日平均客数も一貫して必要客数を大幅に下回っていました。

この点について、裁判所は、

営業成績は、事業主の努力に左右される面もあるが、他方、特に営業当初は、開業に伴う本部の営業の指導援助によるところも少なくない

開業後の控訴人の営業に取り立てて問題があったとは認められない

とした上で、本部(被控訴人)の売上試算、予測について、

被控訴人は、クリーニングの取次店はユニット店とは差異があり競合店にはならないことを前提に売上試算、予測したが、取次店とユニット店とでそのような差異があるとはいえず、売上試算、予測は、競合店についての判断を誤ってしたものというほかない

と指摘して、本部(被控訴人)が契約に先立って示した情報は客観的かつ的確な情報でなかったと結論づけました。

控訴人が被った損害

裁判所は、加盟店(控訴人)が本件契約の締結及び開業により被った損害として、

開業費用(機器のリース料や購入費用等)

店舗賃貸借関係費用(現状回復費用、保証金償却、仲介手数料等)

など、合計約3000万円を認めました。

なお、加盟店(控訴人)が主張した損害のうち、「開業した店舗の賃料」については、店舗を利用してクリーニング店を経営して賃料額を上回る売上を得ていた以上、賃料自体は、売上に直接対応する必要経費であるから、開業のために被った損害には当たらないとされています。

また、慰謝料についても、「相手方の違法行為によって財産上の損害を被ったという場合には、慰謝料請求は、財産上の損害の賠償によってもなお慰謝されない精神的苦痛が残存し、それが金銭賠償を相当ならしめる程度のものであるような場合に限って認めることができる」が、本件ではこの場合に当たらないとして否定されています。

過失相殺について

裁判所は

フランチャイジーも、単なる末端消費者とは異なり、自己の経営責任の下に事業による利潤の追及を企図する以上、フランチャイザーから提供された情報を検討、吟味した上、最終的には自己の判断と責任においてフランチャイズ・システム加入を決すべきものである。

と指摘した上で

本件では、

加盟店(控訴人)としても、本部(被控訴人)が提供した資料等を検討吟味することが十分可能であったこと

加盟店(控訴人)は不安感を抱いていたものの最終的には本部(被控訴人)の売上試算、予測をよりどころにして加入を決定したものであり、多額の開業資金を投下して商売を始めようとする者としては、フランチャイザーの言動に寄りかかりすぎた軽率なものであったこと

加盟店(控訴人)が開業期間中、赤字であったとはいえ売上を得ていたこと

を考慮して、7割の過失相殺を認めました。

同じく情報提供義務違反による損害賠償請求を認めながら、過失相殺を否定(あるいは2割と)した平成7年7月20日浦和地方裁判所川越支部判決と比較すると、「自己の経営責任の下に事業による利潤の追及を企図する」フランチャイジーとしての性格をより重視した判断といえます。

なお、フランチャイザーの情報提供義務違反は、本件のようなフランチャイジーからの損害賠償という局面だけではなく、フランチャイザーからの請求が「権利の濫用」にあたるかという場面でも問題となります。この点については、学習塾のフランチャイズにおいてフランチャイザーの情報提供義務違反が認められた裁判例も参照してみてください。

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