フランチャイズのトラブル事例と回避のポイント

「脱サラして何か始めたい!」、「自分で何か事業をしたい!」、そうした場合にフランチャイズ・チェーンに加盟して事業を始める方が増えています。

しかし、いざ事業を始めてみると、「思っていたのと違う。」「聞いていたのと違う。」と、思わぬトラブルに発展してしまうことも残念ながら少なくありません。

ここでは、フランチャイズのトラブルとしてどのような事例があるかをご紹介しながら、トラブル回避のポイントについて解説していきます。

目次

事前の説明と異なり、儲からない

フランチャイズ契約を締結し開業した後に、もっとも生じやすいトラブルの一つが「フランチャイズ契約締結前に受けた説明と異なり、儲からない」という問題です。

加盟者は、当然、利益を得ることを目的に加盟するわけですが、実際に開業してみたところ、フランチャイザーから事前に聞いていた話ほど儲からない、あるいは赤字続きだというケースが残念ながら少なくありません。加盟者にしてみれば、まさに死活問題です。ときには「騙された!」と感じることもあるでしょう。

加盟を検討するにあたっては、フランチャイズ本部の説明を鵜呑みにすることなく、事業の収益性や内容、実態について、自ら情報収集をして判断をする必要があります。

フランチャイズ本部と加盟者との間には、多くの場合、圧倒的な力の関係の差はありますが、そうだとしても、フランチャイズ契約はあくまでも独立した事業者として締結するものです。

実際に、こうしたトラブルが生じた場合にも、裁判所は、加盟者も独自に事業を営む主体であることを前提にして、様々な判断を行っています。ですから、加盟者も一事業者としての自覚をもって、収益性について慎重な検討、判断を行っていく必要があるのです。

なお、残念ながら、加盟後に、こうした「事前の説明と異なり、儲からない」というトラブルが生じてしまった場合には、フランチャイズ本部に「情報提供義務違反があったか」という形でよく争いになります。

適切な指導援助を受けられない

フランチャイズの加盟店になってみたところ、フランチャイザーは、募集するときは「豊富なノウハウを提供します」などの謳い文句を掲げて居ながら実際には何の指導やサポートもしてくれず、どのように売り上げを上げて良いかわからないまま、高い初期投資をさせられた借金ばかり残って事業終了となる場合があります。

初期投資のあれこれは本部から買わされることも多く、加盟店としては当然このような状況には納得いきません。

加盟にあたっては、フランチャイズ本部の説明を鵜呑みにすることなく、具体的にどのような指導援助が受けられるのかをよくよく確認する必要があります。

契約書にも通常、フランチャイズ本部が行う指導援助の内容が規定されていますので、よく確認しましょう。

なお、こうした不十分な指導援助を巡るトラブルは、「フランチャイズ本部の指導援助義務違反」という形でよく争いになります。

近所に同じフランチャイズの店舗が開店した

自分の店の近隣に同じフランチャイズの店舗が開店したため、売り上げが落ちてしまうという場合もあります。

フランチャイズ契約においては、こうした事態を避けるため、一定の領域の商圏や地域の出店数に上限を設けることで、フランチャイジーの商圏を保護する条項(テリトリー条項)が定められている場合もありますが、そうした条項が設けられていない場合も少なくありません。

フランチャイズ契約を締結する段階では、そこまであまり意識がいかないかもしれませんが、こうしたテリトリー条項の有無や内容は極めて重要な影響があるため、契約書にどう書かれているか、必ずチェックをする必要があります。

不当な拘束や不利益を巡るトラブル

フランチャイズシステムにおいて、通常、フランチャイズ本部と加盟店との間には大きな力の差があります。

そのような力の差を背景にして、フランチャイズ本部から加盟店に対して、不当な拘束や不利益の押しつけがされるトラブルもあります。例えば、フランチャイズが本部が、取引先を不当に限定したり、仕入れの強制を行ったりするようなケースです。

こうした不当な拘束や不利益については、独占禁止法が規制しています。

フランチャイザーの行為が、フランチャイズシステムによる営業を的確に実施する限度を超え、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には、独占禁止法が禁じる優越的地位の濫用や拘束条件付取引等に該当することがあるのです。

その具体的な判断については、公正取引委員会がフランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について(フランチャイズガイドライン)を公表しています。

残念ながら、こうしたトラブルが生じてしまった場合には、加盟店としては、こうしたガイドラインなども活用した粘り強い交渉・対応が必要となってきます。

知らない間にフランチャイザーから借り入れをしていた

事業によっては、フランチャイジーが売り上げを全てフランチャイザーに送金し、フランチャイザーが商品代金などを相殺した残額をフランチャイジーに支払う、という方式が採用されている場合があります。オープンアカウントなどと呼ばれ、コンビニエンスストア等で採用されています。

この方式では、月によってはフランチャイジー側の受取金額がマイナスとなる場合もありますが、こうした場合に、フランチャイザーがフランチャイジーに対してマイナス分を自動的に貸付処理する制度となっていることがあります(多くの場合、金利もつきます)。

このようなケースでは、フランチャイジーはいつのまにかフランチャイザーから多額の借金をしていた、という事態が生じます。

違約金を巡るトラブル

フランチャイズに加盟したものの解約(脱退)をしたいと考える場合があります。

契約途中で契約を解約する必要が生じた場合に、フランチャイジーがフランチャイザーに解約一時金あるいは違約金を支払うことが契約書に定められている場合が少なくありません。

フランチャイジーとしては、加盟時には解約することなど考えていないので、契約書に記載された解約一時金等が高額であることに気が付かない(あるいは深く考えない)ことが多いですが、そうすると解約時に高額の解約一時金等の支払いに苦しむことになります。

もっとも、解約一時金の定めが置かれていたとしても、全ての場合において有効という訳ではありません。

解約一時金の定めが、個人の営業の自由や経済活動の自由に対する制限として社会的良識や正常な商慣習に照らして合理的に必要と認められる範囲を超える場合には、その全部又は一部が無効とされることがあります。

一方的な解約/更新拒絶によるトラブル

他方で、フランチャイズ契約の違反があるなどとしてフランチャイザーから一方的に解約されたり、フランチャイズ契約の更新を拒絶されたりする場合があります。

フランチャイズ契約は継続的契約関係であり、特にフランチャイジー(加盟店)は初期投資に自己資金を費やし長い期間を経て投下資本を回収していくことが少なくありません。そのため、軽微な違反を理由に解除できてしまうとなれば、フランチャイジーの被る損害は深刻です。

こうした観点から、裁判例の多くは、解除にあたって、契約当事者間の信頼関係が破壊されるような特段の事情が必要としています。

フランチャイズ契約終了後の競業避止義務トラブル

フランチャイズ契約が終了した後にもトラブルが生じる場合があります。

多くのフランチャイザーは、フランチャイジーがフランチャイズ契約終了後に同じ業種の営業を行うことを禁じる条項を契約書に定めます。これを「競業避止義務」といいます。

こうした競業避止義務条項は、フランチャイジーの職業選択の自由を制約するものなので、場所や期間は無限定ではなく、一定の範囲(例えば契約終了後2年間、同一県内、など)とするのが一般的ですが、一部のフランチャイザーは極めて厳しい競業避止義務を契約書に定めていることがあります。

このような厳しい競業避止義務は、苦労して培ったノウハウを契約終了後の業務に生かしたいと考えるフランチャイジーにとって大きな不利益となります。制限の程度があまりに重く、営業の自由を不当に制限するものである場合には、公序良俗違反として無効となる場合があります。

フランチャイズトラブルの防止/解決のために

これまで見てきたような様々なトラブルを避けるには、どうすれば良いでしょうか。

まずは、フランチャイズ契約書を良く読むことです。実は、上記のようなフランチャイジーに不利益な規定は、フランチャイズ契約書に全て記載されています。契約書を精読すればこれらのことはフランチャイズ加盟時に把握することができます。

ところが、フランチャイズ契約書は一般的に頁数が膨大で、難しい言い回しが多用されていることも多いので、一読して内容を理解することは困難です。

にもかかわらず、加盟希望者に対するフランチャイザーの説明が十分でない場合が珍しくありません。むしろ、加盟者を増やすために意図的にフランチャイジーに不利益な説明をしないフランチャイザーもいます。

こうした悪質なフランチャイザーが増えていることから、近年、中小企業庁や経済産業省も「フランチャイズ事業を始めるにあたって」との文書を作成して、注意を呼びかけています。

ですので、これからフランチャイズ事業を始めようとする方は、まずは自分で契約書をしっかり読み、疑問点はフランチャイザーに十分な説明を求めるなどして、フランチャイズ契約の内容を十分に把握した上で事業に加盟する必要があります。

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執筆者情報

1994年 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
2011年 弁護士登録(愛知県弁護士会)/名古屋第一法律事務所所属 

交通事故を中心とした一般民事を広く取り扱う。弁護士になる前は損害保険会社で勤務しており、中小企業や事業者の目線を大切にしたいという気持ちから、商取引全般、特に中小企業や個人事業者に関する法的トラブルに積極的に取り組んでいる。

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