事業の適法性に関するフランチャイザーの説明義務違反が認められた裁判例

フランチャイズで営む事業が法令に違反しないことは、事業を行う上でのいわば最低限の条件ですが、ときにこの最低限の条件さえ疑念が生じる場合が出てきます。このような場合に、フランチャイズ本部にはどのような責任が生ずるのでしょうか。また加盟店にも何らかの帰責性が認められるでしょうか。

フランチャイズ契約に基づいて事業を始めたところ、販売システムに法令違反の疑いが生じ営業を停止せざるを得なくなった場合についてのフランチャイズ本部の賠償義務について判断した裁判例(東京地方裁判所平成11年10月27日判決)をとりあげます。

事案の概要

この事案の原告は、コンビニエンスストアーを経営する会社です。

原告会社は、新聞に掲載された宅配による酒類及び医薬品のフランチャイズ販売システムのフランチャイズ募集の広告を見て、フランチャイズ契約締結に至りました。

ところが、この販売システムによる営業を開始した直後に、原告会社は、販売システムを主催するフランチャイズ本部(被告会社)に税務署の立ち入りがあったことを知らされました。そこで、税務署等に問い合わせるなどして調査した結果、同販売システムの営業が、酒税法九条及び薬事法二四条に違反すると認識するようになったのです。

そのため、原告会社は、営業開始から1週間後には、同販売システムによる営業を停止するに至りました。そして、同販売システムを主催するフランチャイズ本部(被告会社)やその代表取締役及び実質的経営者に対して、営業をするにあたって支出した金員の賠償を求めて訴えを提起しました。

法令違反の内容

ここで違反の有無が問題となった法令とは、酒類の販売業をしようとする者は販売業免許を受けなければならないとする酒税法9条や、医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ業として医薬品を貯蔵してはならないとする薬事法24条でした。(被告会社とその取締役は、後に、酒税法違反で起訴され、有罪判決を受けています)

原告会社は、フランチャイズ契約締結前に、この販売システムによる営業が酒税法に違反しないか疑問を持ち、税務署に、被告会社から送付されたマニュアルを持参して酒税法違反の点がないかどうかを質問しましたが、「資料どおりの運営をしていれば酒税法違反の点はない」との回答を得ていました。

もっとも、フランチャイズ契約締結前には、被告会社からマニュアルには記載されていない「御用聞き」を奨励され、研修においても実際に、被告会社の指示に基づいて御用聞きを行うなどしていました。

営業を停止するに至った経緯

原告会社が本件販売システムによる営業を停止した理由についても争いがあり、被告らは、原告会社が営業を停止したのは、希望に満たない数の販売地域しか割り当てられなかったこと等が理由であると主張していました。

しかし、裁判所は、原告会社が営業を停止したのは、被告会社の対応に不満を持った点による影響があるとしても、本件販売システムの適法性に重大な疑義が生じたことが中心的な理由であると認定しています。

賠償義務について

以上を前提に、裁判所は、まず、本件の販売システムは、酒税法9条及び薬事法24条に違反する疑いがあるとした上で、

・結果的に行政法規に違反するとしても、それ自体をもって不法行為上違法であるとはいえない

・しかし、自ら単独で事業を行うのではなく、第三者を勧誘し、これらの者を組み入れて事業を行おうとする者は、第三者に対し、事業の法適合性に関する問題点を十分説明し、第三者においてその事業が行政法規に違反する可能性やその問題点を認識させた上で、新しい事業に参加するか否かを自己責任において判断させる義務がある

としました。

そして、本件では、被告会社役員が、原告会社に対して、本件販売システムによる営業が行政法規に違反する可能性について何ら説明を行うことなく、かえって、酒税法及び薬事法に違反することはないことを強調して営業の参加を勧誘したとして、義務違反を認めたのです。

損害について

義務違反があるとしても、原告会社にいかなる損害があるのかという点が次に問題になります。

この点について、裁判所は、

原告会社が、被告会社役員が本件販売システムの違法性の疑いを説明をしなかった行為により、かかる説明があればしなかったであろう金銭を現実に支出し、原告会社がそれによって取得した物品を他に転用することが不可能であると認められる以上、その支出を損害として賠償すべき義務がある

などとして、具体的には、加盟料や、販売システムコンピュータ一式の代金、商品仕入れ代金や消耗品仕入れ代金、倉庫設置費用、軽車両及びフォークリフト購入代金、人件費等について、損害として認めました。

過失相殺

最後に問題となったのは過失相殺の点です。

被告らは、原告会社は、フランチャイズ契約締結前に、被告会社から送られた資料を検討し、独自に税務署と相談した上、自らの判断により、被告会社との間で本件契約を締結したのであるから、自らの意思で、違法ないしその疑いのある販売システムに参加したのであり、賠償額は、過失相殺により減額されるべきとの主張を行っていました。

この点について、裁判所は

本件販売システムによる営業がマニュアルと異なる内容であることを認識した以上、その適法性について疑問をもって、真実の営業形態を明らかにして再度税務署に確かめるなり、自ら調査を行うべきであったこと

原告会社が、コンビニエンスストアーを経営している会社であって、新しい事業に参加しようとするときに自らの責任でその事業についての法適合性を調査すべきことを要求したとしても、相当性を欠くものではないこと

原告会社と被告会社は、会社の規模にさほど違いはないこと

原告会社が新聞の広告を見て積極的に被告会社の営業所となることを申し込んだ事情などからして、原告会社と被告会社とは対等の立場にあったものと認められること

を指摘した上で、5割の過失相殺をすべきとしました。

裁判所は、

原告としても自らの選択により新しい事業を行おうとする以上、自らの調査により自らの利を守るべきであり、自らの調査不足による損害に対して、原告が何ら責を負わないということはできない

とも述べており、新たにフランチャイズ契約を締結する者としては、こうした評価がされることを念頭において、慎重な調査、判断をしなければならないといえます。(情報提供義務違反が争われたケースで、過失相殺を否定及び2割のみ認めた例として乳酸菌飲料の販売網に関して契約締結時の情報提供義務違反が認められた裁判例もご参照ください)

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