大衆食堂のフランチャイズに加盟し、飲食店を2店舗経営していました。
私は、飲食店を経営するのは初めてでしたが、スーパーバイザーからの経営面での指導を受けられると聞いていましたし、基本的には店舗の物件確保も自分で探すことになっていたものの、本部からも良い物件を紹介するから大丈夫との説明を受けていましたので、何も心配していませんでした。
しかし、契約を締結後、すぐに物件を探し始めたにもかかわらず、全く見つからず、本部に依頼しても物件が見つかりませんでした。ようやく本部から物件を2件紹介され、いずれも本部が作成した立地診断報告書の総合評価はB(出店可能)以上の物件だったため2店舗を開店させました。
しかし、2店舗とも売上げが全く上がらず、期待していたスーパーバイザーからの指導もほとんどなかったので、これ以上は続けることができないと考え、2店舗とも閉めることにしてフランチャイズ契約を更新しませんでした。
あとから知ったことですが、本部が作成した立地診断報告書の内容はいずれも杜撰なもので、そのことを知っていれば私は契約をしませんでした。
本部の行為は詐欺だと考えるのですが、支払った加盟金等を取り戻すことはできないでしょうか。
勧誘行為が詐欺に該当するか
外食産業のフランチャイズ契約締結の勧誘において、店舗物件の確保が困難な状況を知りながら、契約締結の際にその事実を告げず、むしろ本部の支援により物件確保が容易であると説明していた事案において、勧誘行為が詐欺に該当する違法行為と判断された裁判例があります。
この裁判例では、一定期間内に開店できない場合に支払った加盟金が没収される契約条項があることから、店舗物件の確保が困難であることを知っていれば、加盟店側が契約を締結しないのが通常であるとされました。本部はこの事実を知りながら、物件確保が容易であると誤信させたことで、勧誘行為が詐欺に該当すると判断されました。
また、裁判所は、本部がこの違法行為に至った動機を自身の利益確保にあると認定し、契約締結時に事実上詐取された加盟金および加盟保証金の支払義務を定めた部分が公序良俗に反するものとして無効とし、加盟金等の返還が認められました。
判断のポイント
フランチャイズ契約を締結する際、情報格差があるため、加盟店側としては本部の説明を信用して契約を結ぶことが多いかと思います。そのため、説明を受けた内容と実際の状況が異なれば、「詐欺的なフランチャイズだった!」、「騙された!」と感じるのも、自然な感情と言えるでしょう。
今回の裁判例は、本部の勧誘行為自体が詐欺と認定された、珍しい事案です。この事例で本部の勧誘行為が詐欺と認められたポイントは、次の2点にあります。
①本部が加盟店に意図的に虚偽の情報を提供していたこと
②その行為に至った動機が、加盟店の利益を顧みず、本部の利益確保にあったこと
この裁判例では、本部が対象地域において外食産業向けの店舗物件の確保が困難であることを知りながら、本部の支援によって物件の確保が容易であるとの虚偽の説明を行っていました(①)。さらに、本部は自社の上場を目指し、店舗数や加盟金収入の増加を図るため、加盟店が物件を確保する前に契約を締結させていました(②)。
上記裁判例のように本部の勧誘行為が詐欺だったと裁判で認定されるのはハードルが高くかつ立証するのも難しいため、なかなか認められるものではないと思いますが、可能性が全くないわけではありません。 本部の説明や対応に疑問を抱いた場合には、一度弁護士に相談することをお勧めします。
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