フランチャイズ契約更新トラブル|黙示の同意・不法行為は認められるのか?

私はフランチャイズに加盟していました。FC本部と多少のもめ事はありましたが、業務は順調でした。5年間の契約期間が更新に近づいたときも、本部からは特に契約更新をしないという話はありませんでした。

しかし、契約更新時に、FC本部から「更新しない」と言われてしまいました。 フランチャイズ業務ができなくなったら、生活できません。このようなひどいことが許されるのでしょうか。

1.フランチャイズ契約更新の一般的な考え方

多くのフランチャイズ契約では、形式的に契約期間が定められています。
しかし、そこで契約が終わってしまうことはほとんどありません。なぜなら、フランチャイズ加盟店にとって、フランチャイズ事業は大事な生活の糧であり、継続する前提で事業を行っているからです。

加盟店にとって大事なフランチャイズ契約をフランチャイズ本部が一方的に解約することは許されるのでしょうか。
この点について裁判例は、契約の内容や理由によっては本部が一方的にフランチャイズ契約の更新を拒絶しても違法ではないと示しました。

2.契約更新拒絶をめぐる裁判の事案概要

5年間のフランチャイズ契約の契約期間満了を前に、加盟店は契約更新を申し入れましたが、本部は契約を更新しないと通知しました。

怒った加盟店は、2つの主張を展開しました。

  1. 契約更新に関する条項に基づき、契約は自動的に更新された。
  2. 仮に契約が更新されなかったとしても、更新拒絶は不法行為に当たる。

しかし裁判所は、これらの請求をいずれも棄却しました。

3.黙示の同意と更新拒絶の正当性

黙示の更新

加盟店は、本部が契約更新を前提とする行動を取っていたため、黙示的に契約更新に同意していたと主張しました。
しかしこの主張は認められませんでした。

本件では、更新申入れに本部が異議を述べなかったことや、新店舗への移転協議に応じた事実がありましたが、これらは更新可否を検討する過程の行動にすぎず、黙示的同意を認めるには不十分と判断されました。

更新拒絶の正当性

では、どのような事情があれば更新拒絶は正当となるのでしょうか。
裁判所は、フランチャイズのような継続的契約では安定性の観点から更新拒絶を制限すべき場合もあるとしつつ、本件では、以下の事情から、原則として更新されるとはいえず、「やむを得ない事由」が必要とは解釈できないと判断しました。

・更新拒絶事由の規定がない

・自動更新条項がない

・企業間契約であり一方的決定ではない

つまり、更新拒絶の可否は個別事情によって決まるとしたのです。

4.信義則違反・不法行為の主張と裁判所の判断

加盟店は、仮に更新拒絶は有効だとしても、本部が更新への期待を抱かせておきながら不当に交渉を破棄したため、不法行為に当たると主張しました。

裁判所は、一定の事情がある場合には信義則上の注意義務違反として不法行為が成立する可能性を示しました。
しかし本件では、合理的に保護されるべき期待を与えたとはいえず、不法行為は否定されました。

さらに、本部が早い段階で更新拒絶を決定しながら直前まで伝えなかった点も、不法行為を構成しないと判断されました。

5.判例の意義とまとめ

この判例は、フランチャイズ契約更新をめぐる複数の法的構成(黙示の同意、更新拒絶制限、信義則違反、交渉不当破棄)について詳細な判断を示しました。

「フランチャイズ契約だから当然に更新拒絶が制限される」とはせず、契約解釈と事案の個別事情に基づいて判断する立場を採っています。

従って、更新拒絶の有効性や不法行為性は、契約書の条項、交渉経緯、相手方の言動、その他の事情を総合的に考慮して判断されるべきです。

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執筆者情報

1994年 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
2011年 弁護士登録(愛知県弁護士会)/名古屋第一法律事務所所属 
2025年 堀居法律事務所所属
交通事故を中心とした一般民事を広く取り扱う。弁護士になる前は損害保険会社で勤務しており、中小企業や事業者の目線を大切にしたいという気持ちから、商取引全般、特に中小企業や個人事業者に関する法的トラブルに積極的に取り組んでいる。

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