フランチャイズに加盟するにあたってトラブルを避けるためには、フランチャイズ契約書を良く確認することが必要です。
フランチャイズ契約書には、加盟店が何を求めることが出来るのか(権利)、そして、どのような義務を負うのか規定されています。ですから、フランチャイズ契約を締結する際には、フランチャイズ契約書の内容を十分に読み込んで理解することが最低限必要となるのです。
フランチャイズ本部と加盟者との間には、多くの場合、圧倒的な力の関係の差はありますが、そうだとしても、フランチャイズ契約はあくまでも独立した事業者として締結するものです。ですから、加盟者も一事業者としての自覚をもって慎重な検討、判断を行っていく必要があります。
それでは、フランチャイズ契約を締結するにあたっては、具体的にどのような点に注意すれば良いでしょうか。ここからは、フランチャイズ契約書においてよく見られる条項をとり上げながら、注意すべきポイントについて説明していきます。
なお、以下の例示の条文内で、「甲」とされているのは「フランチャイズ本部」、「乙」とされているのは「加盟店」のことを指します。
フランチャイズの契約期間に関する条項
例えば、次のような条項です。
フランチャイズ契約においては、このように通常、契約期間が定められます。そして、多くの場合、双方から積極的に辞めたいという意思表示がなされなければ更新される「自動更新」となっています。
投下資本回収にみあった期間設定か
契約期間が満了すれば、フランチャイズ契約は「終了」するのが原則です。ですから、自動更新条項がついていても、フランチャイズ本部が契約満了時に「更新しない」と判断して通知すれば、そのまま契約は終了してしまうことになります。
もっとも、短い期間でフランチャイズ契約が終了となっては、加盟店にとって酷な場合もあります。そこで、「更新拒絶をするには、フランチャイズ本部と加盟店の間の信頼関係が破壊された特別な事情が必要」として、フランチャイズ本部からの更新拒絶を制限する裁判例も多くあります。
とはいえ、契約期間が満了すれば終了するのが「原則」ではある以上、契約期間が何年と設定されているのかや、更新の条件、手続き等は重要なチェックポイントです。
とりわけ、加盟にあたってまとまった資本の投下を行う場合には、その資本回収に見合った期間になっているのかという観点から慎重に確認する必要があります。
また更新にあたって、更新料が発生するのかどうかも一つのポイントです。
フランチャイズ契約期間途中の解約
契約期間は、当然のことながら、フランチャイズ本部のみならず、加盟店も拘束する取り決めです。
したがって、加盟店が途中でフランチャイズから脱退したいと考えたときには、これを制約する条項にもなります。
フランチャイズに加盟する段階では、将来脱退する際のことについてはあまり考えられないかもしれませんが、現実には、フランチャイズに加盟したものの、すぐに脱退したいと考えるケースは少なくありません。
とりわけ契約期間が長く設定されている場合には、契約期間途中で、加盟店から任意に、つまり、自分の都合で解約することが認められているのかどうかをよく確認する必要があります。
また、契約期間途中で加盟店が任意に解約することを認めている場合でも、その条件として、違約金の支払いを定めている場合が多くありますので、この点もよく確認する必要があります。
経営指導に関する条項
経営指導に伴って、研修を義務づけられていることもあります。
例えば、次のような条項です。
上記の例文のように、どのような研修を受けなければならないか、費用はどれだけかかるかといった点が規定されていることがあり、事業開始までにどれだけの労力と時間がかかるのか、事前に把握する意味でも、しっかりと確認するようにしてください。
商品の仕入れや販売条件等に関する条項
商品の仕入れや販売条件等について一定の制約が設けられているケースがあります。
例えば、次のような条項です。
上記のように、仕入れることができる商品、販売方法、販売金額といった点が明確に定められていると、当然、営業していく上で自由度は少なくなりますので、どのような制約を受けるのか、よく確認をする必要があります。
テリトリー条項
加盟店の店舗周辺地域で、本部又は他の加盟店が店舗を出店できるか否かに関して規定された条項です。
上記の文言であれば、近所に同じフランチャイズ・チェーンの店舗が出店するリスクは低くなりますが、
といった文言であれば、近所に同じフランチャイズ・チェーンの店舗が出店するリスクは高くなりますので、ご自身の営業活動に重大な影響を受けることになります。
そのため、テリトリー条項の内容は、契約締結時に必ず確認するようにしてください。
加盟金条項
加盟店が、契約締結の際に本部に対して加盟金を支払う旨が規定された条項です。
「加盟金」と聞くと金額がまず気になるところですが、加盟金以外にも契約締結段階で支払いを求められるものがある可能性がありますので、二重払いを防ぐという観点から加盟金が何の対価として支払うこととなっているのか、という点は必ず確認してください。
また、上記例文の第3項にあるように、「いかなる場合においても返還しない」旨が規定されていることがあります。
この場合には、開店できなかったとしても、加盟金の返還を請求することが難しくなります。そのため、店舗候補の物件が確定した後など、開店の見通しができてから契約を締結するなどした方が、トラブル回避にとってよいかと思います。
ロイヤリティ条項
加盟店が、契約期間中に本部に対してロイヤリティを支払う旨が規定された条項です。
法律上、本部は、ロイヤリティの金額や算定方法、ロイヤリティの性質(何の対価なのか)、支払時期、支払方法を書面で記載し、加盟店に説明をしなければならないため、これらの点につきましては、しっかりと確認をした上で、説明を受けてください。
また、金額について、上記のとおり「毎月の売上高の●%」という形で規定されずに、「毎月○○万円」と定額で規定されることもありますので、よくご確認ください。
違約金条項
フランチャイズ契約に違反した場合に、一定の違約金を支払う旨の違約金条項が設けられることが少なくありません。
違約金の意味は契約の定め方によって様々ですので、その意味をよく確認する必要があります。また、違約金が不相当に高すぎる場合には、公序良俗に反するとして、その効力が限定されることにも注意が必要です。
解除条項
フランチャイズ契約が解除される(契約が終了する)根拠が規定された条項です。
どういった場合に本部が契約解除を言ってくるのか、加盟店が契約を解除したい場合、どういう手続が必要なのか、という点について、あらかじめ確認しておくとよいかと思います。中途解約の場合には、違約金を支払う旨が規定されることもありますので、その点についても注目してください。
契約終了後の措置
契約が終了した場合、どういった対応をしなければならないかが規定された条項です。
契約によっては、上記例文にとどまらず、返却する物の中に、加盟店が購入した物まで含まれていることがありますので、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
競業禁止条項
加盟店が、フランチャイズ契約終了後、フランチャイズ事業と同じ内容の事業を行わない義務を負うことが規定されている条項です。
フランチャイズ契約が終了した後、トラブルになることが多いのが、この競業禁止条項です。
契約終了後、何年間、同種事業を行ってはいけないのか、どういった事業が競業として禁止されているのか、条項をよく確認していただけたらと思います。
以上の条項は契約の中の主だったものであり、フランチャイズ契約では様々な条項が事細かく規定されています。
説明会などで聞いていた内容と違ったとしても、契約を締結してからでは対応できないこともありますので、事前にしっかりと契約内容を確認した上で、フランチャイズ契約を締結するようにすることが、トラブルに巻き込まれないようにするために重要です。
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