FC本部にブランド価値を維持する義務はあるか
ご相談の事案は、本部が加盟店に対して、情報提供を怠ったり、指導援助を怠ったりするなどの、直接の約束違反はありません。そして契約書に「FC本部は直営店において食中毒事件を起こしてはならない」という条項があるわけではありません。
従って、加盟店はFC本部に対して「契約違反」を主張することはできないようにも思えます。もちろん、直接何かされたわけではありませんので、不法行為を理由とする損害賠償を請求することも困難です。
しかし、FC本部の怠慢によって「フランチャイズのブランド価値」が著しく毀損されたことは事実です。そして、フランチャイズに加盟する者は、そのブランドの価値の高さに引かれ、その価値の高いブランドである屋号や商号を掲げることに魅力を感じて、フランチャイズに加盟するのです。
であれば、たとえ契約書に記載がなくとも、加盟店はFC本部に対して「フランチャイズのブランド価値を維持する義務」を追うとして、契約違反による損害賠償を主張できないでしょうか。
裁判例
原則として、FC本部と加盟店の間の約束事は契約書に記載されていることになっています。従って、契約書に記載されていないことについて「約束があった」ということはできません。
しかしながら、FC本部が加盟店に利用することを許諾する商標やマークなどが加盟店の業務に大きな影響を与えるのであれば、たとえ契約書に記載されていなくとも、フランチャイズのブランドが毀損されないようにする、さらにいえばフランチャイズチェーン全体の評判や信用を守るという暗黙の約束があったとみなされる場合もあるでしょう。
裁判例では、FC本部の事故によってフランチャイズのブランドが毀損され、その結果加盟店が損害を被ったことを理由とする損害賠償請求事件において、契約書に「チェーン・フランチャイズ・システムの信用、名誉、のれんを傷つける行為をしたときは、事前の催告を要せず、直ちに本件フランチャイズ契約を解約することができる」という規定があったことを根拠として、加盟店のみならずFC本部にも「チェーン・フランチャイズ・システムの信用、名誉、のれんを傷つけてはならないという義務がある」ことを認めた事例があります。
おそらく、上記の規定は「加盟店がフランチャイズの信用を傷つけた場合に、本部が加盟店を解約する」ためのものと思われます。しかし、当該規定には特に「加盟店だけが」義務を負うと明記されていなかったことから、双方に「信用、名誉、のれんを傷つけてはならないという義務がある」ことを認定しました。
つまり、フランチャイズ本部には、たとえ契約書に明記されていなくても、フランチャイズのブランド価値を傷つけないように守る義務があると認められたのです。
損害があるか
もっとも、FC本部が加盟店に上記のような義務を負うからといって、必ずしも常に損害賠償請求が認められるわけではありません。
ブランド価値が下がったからといって、直ちに売り上げが下がるとは限りませんし、どの程度のことが起きればブランド価値が下がったといえるか、ということも定かではありません。その影響も業態によって様々でしょう。つまり、因果関係が認められるかどうかが重要と言うことになります。
前述の裁判例も、FC本部に「フランチャイズのブランド価値を傷つけないように守る義務」があると認めたものの、損害賠償請求をした加盟店の損害と、ブランド価値の毀損との間の因果関係が認められず、加盟店は敗訴しています。
ブランドの価値が業務に与える影響は業務によって様々であり、その程度、影響の範囲などにも依拠します。前述の裁判例も、そのブランド価値の毀損はテレビで報道されるほどのものでした。かなり大きな事件などなければ、簡単に認められるものではないと考えるべきかもしれません。
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