学習塾のフランチャイズにおいてフランチャイザーの情報提供義務違反が認められた裁判例

フランチャイズに加盟した後に、思うような利益が上がらず、「事前に聞いていた話と違う!」としてトラブルになる例は少なくありません。

通常、加盟店は経験や知識に乏しく、加盟にあたってはフランチャイズ本部から提供される情報に頼らざるをえない側面があります。

そのため、加盟にあたってフランチャイズ本部から提供された情報が不十分であったり、杜撰であったりした場合には、フランチャイズ本部の「情報提供義務違反」として、法的な責任の問題になりえます。

ここでは、フランチャイズ本部の情報提供義務違反が認められた例(京都地判平成5年3月30日)をとりあげます。

事案の概要

本件で問題となったのは学習塾のフランチャイズチェーンです。

フランチャイズ本部(原告)が、加盟店(被告)に対して、ロイヤリティーの未払い分や講師に支払うべき給与立替金の支払い等を求めたのに対して、加盟店は、フランチャイズ本部の勧誘行為が不法行為に当たる等として、逆に損害賠償請求を主張するなどして争いました。

裁判所の判断①不法行為の成否

裁判所は、

原告社員らが本件契約を締結するよう勧誘したこと等の行為が不法行為となるためには、原告に本件契約に定められた義務を履行する意思がなくその見込みがなかったことが前提となる

とした上で

講師の派遣が行われており、授業内容に特に問題があったとは認められないこと
フランチャイズ本部が、フランチャイズ契約に規定されている新聞折込広告や、チラシの投函を行っていること

を指摘して、勧誘行為自体が不法行為となるはいえないとしました。

また、加盟店が

熟慮する余裕なく直ちに契約書に署名等をさせられたわけではないこと
他の加盟店が運営する塾の見学をしたり、その経営者と面談をした上でフランチャイズ契約を締結したこと
小中高の各コースのうち、小中のコースについては、生徒がほとんど集まらなかったにもかかわらず、そのまま開講したこと
1年半にわたって塾の経営を続け、入塾金や授業料を自ら徴収し保有していること

等を指摘して、フランチャイズ本部の行為が不法行為を構成するとは言えないと結論づけています。

裁判所の判断②情報提供義務違反の有無

他方で裁判所は、フランチャイズ本部の情報提供義務違反については、これを認め、フランチャイズ本部がロイヤリティーの未払い分や講師に支払うべき給与立替金の支払い等を求めることは「権利の濫用もしくは信義則違反」で許されない、としました。

フランチャイズ本部が負う情報提供義務

まず、裁判所は、

本件フランチャイズ契約においては、フランチャイズ本部が加盟店を助言、指導することも重要な要素となっていること

学習塾経営の経験がない加盟店とすれば、フランチャイズ本部により的確な予測がされていることを期待してフランチャイズ契約を締結すること

を指摘した上で、

フランチャイズ本部は加盟店に対して本件契約の締結に当たって生徒確保の可否に関し客観的な判断材料になる正確な情報を提供する信義則上の義務を負っている

としました。

義務違反と権利の濫用

その上で、裁判所は

(2,3名程度の調査担当者が、スーパーマーケットの店頭などで二日ないし二週間程度かけてアンケートをとったものを集計したというような)不正確な通塾率等の調査結果を百分率で小数点第一位の数字まで算出して資料に掲げることは、原告が被告に極めて不誠実な資料を示したことになるといわざるを得ない。

として、フランチャイズ本部は本件契約締結に当たり、加盟店に対して客観的な判断材料になる正確な情報を提供すべき信義則上の義務に違反した、としました。

そして、フランチャイズ本部が契約終了までの1年半にわたって、契約の条項に従った支払いを強く求めてなかったことや、加盟店が当初の出資金の半額すら回収出来ていないこと等も考慮すると、フランチャイズ本部の請求は「権利の濫用もしくは信義則違反」で許されない、と結論づけました。

加盟店からの損害賠償請求を退けつつ、フランチャイズ本部からの請求も権利の濫用を根拠に退けるという、ある種「痛み分け」ともいえる判断ですが、フランチャイズ本部の情報提供義務のあり方を考える上で参考になる裁判例です。

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