私は、とある古物商のフランチャイズ店に加盟して数店舗を経営していましたが、今回いろいろあってフランチャイズ契約を解約することになりました。
今後はどうするかというと、新しく商売を始めるより、これまでしてきた古物商をしたいと考えております。
ただ、解約するフランチャイズ本部と締結した契約書には「今後3年間はその都道府県では同じ業務をしてはならない」という、競業を禁止する規定があります。
私はこの規定自体不満なのですが、契約書に記載されている以上仕方ないということであれば、契約書の当事者は私なのですから、例えば会社などの法人で商売をするか、あるいはこれまで自分が雇っていた店長に商売をさせることを考えています。
何か問題はありますでしょうか。
競業避止義務について
一般に、ほとんどのフランチャイズ契約には、フランチャイズ契約が解約などによって解消された後も、一定期間、特定の地域で同一の業務を行うことを禁止する旨が規定されています。このような規定は競業禁止規定、競業避止規定などと呼ばれます。
このような規定は、脱退する元加盟店の職業選択の自由(憲法25条)を制限するものではありますが、フランチャイズ契約もノウハウの提供を本質とするものなので、加盟店が解約した後にノウハウを自由に使用できるとなると、フランチャイズ本部も大きな不利益を被ります。
こうしたことから、競業禁止規定においては、合理的な期間、地域に限定されていれば、脱退する加盟店が競業避止義務を負うことも適法であるとされています。
今回の競業禁止規定も「今後3年間」「当該都道府県」と限定されているので、合理的でないとまではいえず、脱退する加盟店に競業避止義務は生じると考えられます。
契約当事者以外の者も競業避止義務を負うか
しかし、フランチャイズ契約は、当然ながら契約当事者であるFC本部と加盟店の間で締結されるので、その効力も原則として両者が対象となります。
では、脱退する加盟店が例えば個人だった場合、当該個人以外の者、例えば法人であれば競業禁止の対象とならないのでしょうか。あるいは、その個人が雇用していた別の個人であればどうでしょうか。
裁判例の考え方
会社について
会社は「法人」であり、個人とは「別人格」ですので、契約終了後に競業を行うのが法人であれば、フランチャイズ契約には締結しないようにも思われます。
しかし、もし常にそのような考え方が通用するとなれば、脱退した加盟店が個人の場合には、会社を設立しさえすれば競業禁止規定を自由に免れることとなってしまいます。
裁判例も、会社だからといって競業避止義務の対象外だと無条件に認めてはいません。競業避止義務を負う個人が100%出資して設立し、自らが唯一の代表取締役となっている会社については、出資等の状況及び会社における個人の地位に照らして、契約当事者である個人と同様に競業避止の対象であるとしました。
この裁判例の趣旨に鑑みれば「100%出資して設立し、自らが唯一の代表取締役となっている会社」に限らず、例えば一定割合を出資していたり、例えば配偶者や親族を代表者としたりする場合にも、出資状況や会社との人的関係から、加盟店である個人と同様に競業避止義務の対象と認められる可能性があります。
雇用者について
では、加盟店個人ではなく、その個人が雇用していた人の場合はどうでしょうか。この場合は、会社とは異なり全くの別人格なので、競業避止の対象とはならないようにも考えられます。
しかし、別の個人であるとしても、当然に対象外となる訳ではありません。
加盟店である個人に雇われていた人(「A」とします)が、フランチャイズ契約脱退後に同じ業務を行ったという事例で
「信用上の問題があったためAではなく加盟店の個人とFC契約が締結されたこと」
「AがFC本部で研修を受講し店舗として営業を取り仕切っていたこと」
「FC本部からの支払督促などもAが窓口として対応していたこと」
「FC本部への支払いをAが行っていたこと」
などの個別具体的事情から、加盟店の個人だけでなくAも「信義則上」契約書上の競業禁止規定の対象となり、競業避止義務を負うと認定しました。
まとめ
上記の裁判例から、競業禁止規定の対象となる者は、必ずしも契約当事者に限られるというわけではなく、個別具体的な事情から判断し、場合によっては会社や雇われていた者も対象となることがわかります。
もっとも、その判断基準は簡単ではありません。上記の裁判例も個別事情について判断しているにすぎず、一般的な基準を提示しているわけではありません。
競業禁止規定の対象が誰にまで及ぶかについて悩まれている場合には、弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。
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