フランチャイズ契約終了後の競業避止義務は、本部が一方的に解約した場合にも適用されるのか?

フランチャイジーとして15年間営業してきましたが、別のショッピングモールに、FCとは関係ない自営店を出そうとしたところ、フランチャイズ本部から一方的に解約を申し入れられました。

本部の解約の理由は「新規出店について許可を得なかったから信頼関係が破壊されたから」というものです。契約書にはFC本部のノウハウである「Yシステム」による店舗の新設は禁止されていましたが、普通の店舗の出店を禁止する条項はありません。到底納得いきません。

このような本部には愛想がついたのでFC契約は脱退しますが、FC契約の「契約終了後2年間は同一商業施設で同じ営業をしてはならない」という競業避止条項に従わなければならないのでしょうか?

目次

1.ポイント整理

ほとんどのフランチャイズ契約には契約終了後の競業避止義務が定められていますが、その解釈については、以下の点に注意するべきです。

①条項の適用範囲

競業避止条項の内容がどのようなものかに注目が必要です。

単に契約終了の場合を定めているのであれば、契約終了の経緯や事情を問わず競業避止条項が適用されると解釈することは可能となります。

② 競業避止義務の正当性(フランチャイザー側の事情)

競業避止義務には、本部の顧客・商圏を守ること、ノウハウ等の営業秘密を保持することという正当な目的があります。ただし、本部が守るべき保護に値するノウハウが実際に存在するかどうかが問われます。守るべきノウハウがなければ、競業避止義務はその正当性を失います。

③ 制約の相当性(フランチャイジー側の事情)

営業禁止の期間・範囲・対象、そして契約終了に至った経緯(特にフランチャイジーに帰責性があるかどうか)が、信義則(民法1条2項)違反の判断に大きく影響します。

④ 信義則による制限

たとえ有効な競業避止条項が存在していても、具体的な事情に照らして、フランチャイザーがこれをフランチャイジーに主張することが信義則に違反する場合があります。

本件については、「加盟店に特段の落ち度がないのに契約解除となった」場合に競業避止条項が適用されるか、上記では④が問題となるケースです。

2.裁判例の紹介:東京地裁平成27年10月14日判決(平成26年(ワ)第33399号)

時計販売・修理のフランチャイズの事例です。原告はFC加盟店として、15年間、ショッピングモールAで営業していました。

原告が別のショッピングモールBに自営店(時計販売・修理だがFCとは無関係)を出店しようとしたところ、被告(FC本部)は「本部の許可なく店舗を新設した」と主張し、契約違反による解除ではなく、任意解除権に基づいて契約の解約を申し入れました。

あわせて、「契約終了後2年間はショッピングモールAで同一の営業をしてはならない」旨の通知を行いました。

原告は、この競業避止義務を負わないことの確認を求めて提訴したという事案です。

3.裁判所の判断

⑴ 裁判所は、競業避止条項(本件条項)は、被告の解約申入れの場合にも適用されると解釈しました(1①)。

⑵その上で、信義則違反(争点④)について

・ 被告の主張するFCノウハウ「Yシステム」は、もっぱら商標・プライベートブランド商品・物流センター経由の仕入れシステムに関するものであり、保護に値するノウハウが含まれるとは認められない

・ 原告はYシステムを用いずとも時計店を営むことができる

・ 原告がショッピングモールBへの出店においてYシステムを流用しようとしたとも認められない

 などの事情から、加盟店に契約違反(解除事由)は存在せず、本部が一方的に解約を申し入れたことを認定しました。

⑶ さらに、上記⑵の諸事情に加えて、2年間の営業禁止が課されれば、帰責性のない原告が耐え難い経済的損失を被ることになることを踏まえて「本部が加盟店に本件条項に基づき原告に営業禁止を求めることは信義則に違反し許されない」と結論づけました。

4.本裁判例の意義

本判決は、以下の点で実務的に重要です。

第一に、本部が解約を申し入れた場合でも競業避止条項は適用されることを前提としながら、その主張が信義則に反するとして加盟店を保護した点です。

第二に、本部が主張するノウハウの保護価値を厳格に審査した点です。被告は「Yシステム」という独自のノウハウがあると主張しましたが、その具体的内容と有用性を明確に立証しなかったことが、判断に影響しました。フランチャイザーとしては、保護すべきノウハウの具体的内容を明確に主張・立証できなければ、競業避止条項の主張自体が制限されるリスクがあります。

第三に、フランチャイジーの帰責性の有無が重要な判断基準となった点です。本件では、加盟店に契約違反がなかったにもかかわらず本部が一方的に解約したという経緯が、信義則違反の認定に決定的な役割を果たしました。フランチャイジーとしては、解約の経緯を丁寧に記録・保存しておくことが重要です。

5.まとめ

フランチャイズ契約に競業避止条項が定められていても、本部が合理的理由なく一方的に契約を解約した場合には、その後の競業避止義務の主張が信義則に反するとして認められないことがあります。本部から突然の解約と営業禁止の通知を受けた場合でも、すぐに諦めず、解約の経緯・本部のノウハウの実態・自社の経済的損失等の事情を整理した上で、弁護士に相談することをお勧めします。

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執筆者情報

1994年 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
2011年 弁護士登録(愛知県弁護士会)/名古屋第一法律事務所所属 
2025年 堀居法律事務所所属
交通事故を中心とした一般民事を広く取り扱う。弁護士になる前は損害保険会社で勤務しており、中小企業や事業者の目線を大切にしたいという気持ちから、商取引全般、特に中小企業や個人事業者に関する法的トラブルに積極的に取り組んでいる。

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