フランチャイズ契約の競業避止義務と違約金:無効となるケースと裁判所の判断基準

目次

契約書の競業避止義務規定と違約金規定について

ほとんどのフランチャイズ契約では、契約終了後に加盟店に、フランチャイズ業務と競業の関係にある業務を行うことを禁止する、いわゆる「競業避止義務」が定められています。

そして、その義務違反した場合については、ペナルティとして高額な違約金を支払うことが定められていることが非常に多いです。

こうした競業避止義務規定については、その内容があまりに厳しい場合には、加盟店の職業選択の自由(憲法22条)を侵害するとして、無効となる場合があります(詳しくは、【完全ガイド】フランチャイズ契約を解約・終了させたい加盟店のための「競業避止義務」対策)。

そして、競業避止義務規定が有効な場合にも、そのペナルティが違約金があまりに高額な場合には、裁判で「公序良俗に反して無効」(民法90条)とされることがあります。

高額な違約金の一部が公序良俗により無効とされた事例

東京地判令和元年8月15日

この事案では、ある介護施設のフランチャイズ契約が、地域を限定せず5年間は競合できないとする競業避止義務規定を定め、違反した場合の違約金は「違反期間、態様を問わずロイヤリティ平均月額の10年分」としていました。さらに契約では、この定額の違約金を超える損害を本部が受けた場合には超過分を請求できることになっていました。

この競業避止義務に違反した元加盟店に対して、フランチャイズ本部が損害賠償請求をしたのですが、この元加盟店の平均月額ロイヤリティが30万円以上でした。契約書の規定通り「10年分のロイヤリティ金額」とすると、その金額は4000万円以上と、非常に高額な金額になってしまいました。この金額の適正さが問題となりました。

裁判所は、上記ロイヤリティは「高額にすぎる」と判断しました。適正な違約金額は「平均月額ロイヤリティの30カ月分」であり、その金額を超える部分については「公序良俗に反して無効」と判断したのです。結果として、認定された違約金は契約書の計算式の4分の1となりました。

東京地判令和元年9月11日

同様の裁判例で、東京地判令和元年9月11日では、フランチャイズ契約書では競業避止義務の違約金が一律1000万円と定められていたところ、元加盟店の競業期間がせいぜい1年で、事業から得た利益も大きくないなどの理由から、75万円を超える金額は公序良俗に反して無効と判断しています。

公序良俗違反の基準

上述の事例で、裁判所がどのような理由で適正な違約金額を「平均月額ロイヤリティの30カ月分」「75万円」と定めたかは、必ずしもはっきとはしません。

判決理由に「本件にあらわれた事情を総合考慮すると」との記載があることからも、何か明確なわかりやすい基準があるのではなく、どのような業種なのか、元の契約期間は何年だったか、競業期間は何年だったか、得た利益は大きかったか、FCノウハウは特殊なものか、など様々な事情が考慮されるようです。

もっとも、高額すぎる違約金の一部を無効とする際に、適正な違約金額を「平均月額ロイヤリティの30カ月分」とする裁判例は複数見受けられるので(東京地判平成6年1月12日等)、裁判所としても一定の目安としていることが考えられます。

もし、契約書記載の違約金の金額が平均月額ロイヤリティの30カ月分を超えるのであれば、不当に高額として一部が公序良俗により無効となる可能性がありますが、もちろん事案次第であり、一概にはそうとはいえませんことに注意が必要です(60か月分のロイヤルティの違約金を認めた裁判例として大阪地判昭和61年10月8日)。

あわせて読むと理解が深まる記事

さらに理解を深めたい方のために、関連する解説記事を紹介します。 

【完全ガイド】フランチャイズ契約を解約・終了させたい加盟店のための「競業避止義務」対策
加盟店がフランチャイズ契約終了時にとるべき対策などを解説しています。

フランチャイズ契約の競業避止義務は有効?無効?裁判例から学ぶ判断基準
競業避止義務の効力を判断する基準について、裁判例を元に解説しています。

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執筆者情報

1994年 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
2011年 弁護士登録(愛知県弁護士会)/名古屋第一法律事務所所属 
2025年 堀居法律事務所所属
交通事故を中心とした一般民事を広く取り扱う。弁護士になる前は損害保険会社で勤務しており、中小企業や事業者の目線を大切にしたいという気持ちから、商取引全般、特に中小企業や個人事業者に関する法的トラブルに積極的に取り組んでいる。

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