FC本部にFC契約を更新する義務はあるか
一般に、フランチャイズ契約書は「無期限」ではなく、3年や5年ごとに更新する内容となっています。ほとんどの場合、契約書には「更新しなければならない」という義務は定められておらず、契約書の文言だけみると、更新時期のたびに本部が更新するかどうかを自由に決めることができるように見えます。
しかし、加盟店にとっては、長期の経営を前提として、人を雇い、ノウハウを蓄積し、投資を行い、宣伝をしているのですから、3年や5年でフランチャイズ契約が更新されなくなってしまうのは大損害です。
こうしたことから、たとえ契約書に更新義務について規定されていなくても、本部には加盟店とのフランチャイズ契約を原則として更新する義務があるのではないか、とも考えられます。
FC契約の更新に関する裁判例
裁判例では、一般的に、フランチャイズ契約においては、長期間にわたり取引関係を継続することが当初から予定されており、契約当事者もこれに基づいて人的物的に多大な投資を重ねて、共同して事業を展開するのが通常であり、このような契約においては、所定の契約期間が満了するに当たり更新拒絶の意思表示がされた場合であっても、当事者の投資等を保護し、継続的に事業を展開することに対する期待についても一定の法的保護を図ることを要すると解すべきである、としたものがあります(東京地裁令和3年3月2日判決)。
同裁判例は、FC本部による契約更新拒絶は自由にはできず「信義則による一定の制約があると解すべき」としました。その具体的内容としては「①更新に関する約定の内容、②従前の更新の経緯、③契約の目的内容と実情、④更新拒絶の経緯と理由、⑤その他の諸事情を総合的に考慮して、信義則上の相当性の観点からこれを判断するのが相当」としています。
しかし、これらの判断基準による判断は簡単ではありません。
例えば②については「より多く更新していればいるほど、より継続に対する期待を保護すべきである」と考えることができる一方で「長く契約していたのであれば、投資資本も十分回収しているから、更新が終わってもいいだろう」と、逆の評価も可能です。そもそも⑤で「その他の諸事情を総合的に考慮」とあることから、結局のところ、関係するすべての事情を総合的に判断する必要があることになります。
どのような場合に「更新拒絶」は認められるか
上記の裁判例の判断枠組みからすれば、もし本件のFC本部の更新拒絶が「仕入先についての文句が気に入らない」などのような理由であれば、合理的理由があるとは言い難いでしょう。また、すでに1度更新していることからしても、加盟店の利益はより保護すべきであると考えられるかもしれません。
しかし、契約書には更新拒絶の条件などが記載されていないのですから、契約条項の文言を尊重するのであれば、当事者に更新をするかどうかを決める自由を与えるべきという考え方もあるでしょう。FC本部の営業戦略により地域を限定縮小せざるを得ない、などの事情があるのであれば、更新拒絶もやむを得ないと考えられる場合があります。
一方で、加盟店は本部に比べて立場が弱く、生活がかかっていることから、よほどの理由がない限り、更新を認めるべきであろうという考え方も有り得ます。
このように、FC本部による更新拒絶が有効化かどうかは、さまざまな事情を考慮して判断されることになります。突然本部から契約更新を打ち切られても、すぐにあきらめるのではなく、まずは弁護士などに相談してみる価値はあるかもしれません。