フランチャイズの契約期間とは
フランチャイズの契約期間とは、フランチャイズ契約が継続する期間という意味です。
多くのフランチャイズ契約においては、契約がいつ終了するのかがあらかじめ定められています。その終了するまでの期間が契約期間です。
契約によって、1年契約、3年契約、5年契約などと、様々な期間が定められています。
定められた期間が経過すると、(原則として)契約は終了することになりますので、契約期間に関する定めは、フランチャイズ契約における重要な項目の一つです。
そのため、小売りフランチャイズチェーンについて規制する中小小売商業振興法においても、フランチャイズ本部が加盟者に対して開示すべき事項の一つとして、「契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項」が挙げられているのです。
契約期間と契約の更新
さて、契約期間が経過すれば契約は終了するのが原則ですが、多くのフランチャイズ契約では期間満了の際に、これを更新するための更新条項が設けられています。
契約が更新されれば、フランチャイズ契約は終了せずに、そのまま継続することになります。
更新後の契約期間の長さは、フランチャイズ契約で定められた内容によることになりますが、通常は、従前の契約と同一条件での更新ですので、当初定められていた契約期間と同じ期間だけ、フランチャイズ契約は継続することとなります。
加盟店にとってフランチャイズ契約に基づいていつまで業務を継続できるのかは投下資本の回収や収益の獲得等の観点から重大な関心事ですから、更新の条件や手続については入念にチェックしておくことが大切です。
更新拒絶と信頼関係の破壊
更新拒絶とは、契約の一方当事者が契約の継続を望んでいるときに、他方が契約の更新を拒むことです。
更新拒絶は、フランチャイズ本部からの場合と、加盟店からの場合の両方あり得ますが、問題となるのはほとんどの場合、フランチャイズ本部からの更新拒絶です。
フランチャイズ契約の継続を望む加盟店としては、突如としてフランチャイズ本部から更新拒絶をされてしまうととても困ったことになります。そうなった場合、なすすべはないのでしょうか。
本来であれば、契約期間が経過すれば、フランチャイズ契約は終了するのが原則です。ですから、フランチャイズ本部は、フランチャイズ契約を更新して加盟店との契約関係を継続するかどうかを、自由に決められるようにも思えます。
しかし、多くの場合、加盟店は加盟にあたって一定の資本投下を行っており、フランチャイズ契約を通じて、その投下資本の回収を行うことを期待しています。そして、そのためにはフランチャイズ契約が継続することが必要です。
にもかかわらず、フランチャイズ本部が、フランチャイズ契約を更新するかどうかを全く自由に決められるというのでは、あまりに加盟店の営業の利益は害されてしまいます。
そこで、多くの裁判例において、フランチャイズ本部による更新拒絶については一定の制約が課されています。
具体的には、フランチャイズ契約期間満了をもって、フランチャイズ本部が加盟店に対して、契約の更新拒絶をする場合、信頼関係が破壊されたと認められる事情が必要であるとする裁判例があります。
例えば、名古屋地裁平成元年10月31日判決は
フランチャイズ契約は、様々の営業領域において利用され、且つ契約内容も多種多様であって一定の標準が存在するとはいえない契約形態であり、「期間の定めのある場合には、その間にフランチャイジーが営業権使用許諾を得るためにフランチャイザーに支払った対価を回収しようとすることは合理的期待として保護されるべき」であり、「自動更新しないで契約を終了させるには、当事者双方の公平の見地から判断してこれを継続し難いやむをえざる事由が必要である」
と判示しています(東京高裁平成20年9月17日決定、東京地裁平成22年5月11日判決、東京高裁平成25年6月27日判決、なども同旨です。)。
また、東京地裁平成22年5月11日判決は
「フランチャイズ契約のような長期にわたって継続的にフランチャイジー(加盟店)が相当多額の投資を行うことが必要とされる契約については、フランチャイジー(加盟店)の契約継続に対する期待を考慮すると、フランチャイジー(加盟店)の営業保護の観点から,たとえ契約の文言上は契約期間が定められていたとしても、フランチャイザー(フランチャイズ本部)は,やむを得ない事由がなければ契約の更新を拒絶することはできない」
と判示しています(鹿児島地裁平成4年8月28日判決、東京地裁平成24年1月30日判決なども同旨です。)。
他方で、信頼関係が破壊されたという事情は不要であるとする裁判例もあります。
福岡高裁平成8年11月27日判決は
経済的合理性を追求する企業間の契約であり、同契約には地域本部において契約の更新拒絶をするための要件として信頼関係破壊等の特別の事情を要する旨の条項はなく、また、本件地区本部契約のようなフランチャイズ契約について、借地・借家関係のように一方当事者を保護する特別の法的規制をした立法もないことからすると、地域本部が本件地区本部契約の期間満了に当たって契約の更新を拒絶するための要件として、控訴人らの主張のような要件が必要であるということはできない。
としています。ただ、この事案でも、結局は、公平の観念に照らして、信義則上、更新拒絶は許されないとしています。
ですので、はっきりと「信頼関係の破壊の事情」を要件とするか否かの違いはありますが、いずれの裁判例もフランチャイズ契約を継続することが困難となる事由があるか否かを更新拒絶の判断基準にしていると言えます。
信頼関係の破壊の有無を判断する基準
信頼関係の破壊の事情を要するとして、どのような事情が認められれば信頼関係が破壊されたといえるのか、という点が問題となります。
例えば、鹿児島地裁平成12年10月10日判決では、フランチャイズ本部が加盟店に対して契約締結から8年後に更新拒絶を行い、さらにその9年後に再び更新拒絶を行った事案で、契約締結から17年が経過した事情をもってしても更新拒絶をしなければならないほどの信頼関係の破壊は認められないとしています。
また、フランチャイズ本部が加盟店に対してフランチャイズ本部主催の会議に出席しなかったことをもって更新拒絶をした事案では更新拒絶は無効とされています。(東京地裁平成22年5月11日判決)。
他方で、途中解約の有効性においても裁判例は信頼関係の破壊の事情を要するとする立場をとっているところ、加盟店がフランチャイズのイメージを毀損する行為をしたり、不適正な経理処理をしていたり、ロイヤリティ料やのれん料の不払い、競業避止義務違反がある事案などでは当該事情があるものとして、中途解約を認めていることからすると(名古屋高裁平成14年5月23日判決、東京地裁平成17年1月25日判決、東京高裁平成11年12月15日判決、東京地裁平成18年2月21日判決、福岡高裁平成19年7月19日判決など)、同様の事由があれば、更新拒絶も信頼関係の破壊の事情があるとして認められるものと考えられます。
そうすると、単にフランチャイズ契約が更新を重ねて長期に及んでいることやフランチャイズ本部主催の会議に出席しなかったという程度の事情のみでは信頼関係が破壊したとは言えず、他方で、フランチャイズ契約に基づくロイヤリティ料等の金銭の支払いがなされていなかったり、または、犯罪行為やブランド価値の毀損などの重大な契約違反がある場合には契約更新拒絶が有効になるといえます。
要するに、加盟店の義務違反行為の内容等がフランチャイズ契約の本質に関わるものであるか否か、義務違反の程度、回数、期間等を踏まえ、信頼関係に与える影響が大きい場合に信頼関係を破壊する事由があるとして更新拒絶を認めているものと言えます。
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