フランチャイズ取引における問題
フランチャイズ本部(フランチャイザー)に加盟店(フランチャイジー)が加盟して行う商取引、いわゆるフランチャイズシステムは、いまやコンビニや飲食店に限らず、様々な分野で行われるようになりました。
しかし、本部と加盟店の力関係、具体的には資金力や情報量、交渉力に大きな格差があることから、加盟店が不当な取引を強いられるなどの問題が生じるようになり、近時、その深刻さは増してきています。
もっとも、現在ではフランチャイズシステム全般を直接規律する法律というものが、日本にはありません。やむを得ず、近時は独占禁止法や中小小売商業振興法などを適用することで問題解決を図ろうとされていますが、どちらもフランチャイズシステム独自の問題を直接対象とするものではないので、十分とはいえません。
こうした事情から、特に加盟店がフランチャイズ取引において不利益を強いられる事例が後を絶ちません。フランチャイズシステムの問題を解決するためには、フランチャイズを直接対象とする法律が必要なのです。
日弁連による提言
こうした現状から、令和3年10月に、日本弁護士連合会が「フランチャイズ取引の適正化に関する法律の制定を求める意見書」を経済産業大臣及び公正取引委員会委員長に提出しました。https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2021/211019.html
その趣旨は「フランチャイズ取引の健全な発展を図り,同時に加盟者が不当に不利益を受けることのないよう,早急にフランチャイズ取引の適正化に関する法律(フランチャイズ取引適正化法)を制定せよ」というものです。
その内容については、主なものとして
- 本部が加盟希望者に対して、労働人時を明確にした合理的な収益情報やドミナント出店のリスクに関する情報等の重要事項につき情報提供義務を負うことを明文化し、義務違反に対しては罰則を制定すること
- 本部は,フランチャイズ契約の契約書ひな型や事前開示書面を経済産業省へ届出るようにし、さらにインターネット上での一般公開を義務付けること
- 開業日から1か月間を初期事業撤退可能期間とし,加盟者が無条件で解約して返金を求められる制度を創設すること
- フランチャイズ契約の内容には、加盟者に一方的に不利益な営業時間を定める条項や,過大なロイヤルティを定める条項,加盟者の契約終了後の投資回収機会を奪う競業禁止条項,加盟者に正当事由がある場合の中途解約を妨げる条項,過大な違約金条項及び本部による正当事由のない中途解約又は更新拒絶を可能とする条項等を禁止し、不公正な条項は不当条項として無効とすること
- 加盟者が団体を設立し自由に加入するする権利を保障し,本部は加盟者の団体に対して誠実に交渉に応じることを義務付けること
- 本部が情報提供義務に違反した場合は,経済産業省が直接行政措置を採ることとし、従わない場合は公表や罰則を科すことができることとすること
- 取引先の制限,仕入数量の強制,見切り販売の制限,営業時間の短縮に係る協議拒絶,事前の取決めに反するドミナント出店等,フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更及び契約終了後の競業禁止などを禁止行為とし,フランチャイズ本部がこれらに違反した場合は,公正取引委員会が直接行政措置を採ることとし、従わない場合は公表や罰則を科すことができることとすること
- フランチャイズ契約当事者間の紛争を専門的かつ迅速に解決するための紛争解決制度を創設すること
などが挙げられています。
いずれも、フランチャイズ問題を直接解決する内容です。
特に②のように、契約書をインターネットで公開することを義務付けることになれば、本部は一方的で不公平な契約書を自ら慎むようになるでしょう。そうしなければ批判の対象となるからです。
⑤は、労働者に定められている団体交渉の権利を加盟店にも認めるというものであり、単独では難しくても連帯し団結することによって本部と強く交渉することを助けるものとなります。
⑧の紛争解決制度も、裁判費用などの負担が重く、争いたくても争うことのできない加盟店にとっては、非常に有益な制度といえます。
現在のフランチャイズを取り巻く問題
この意見書の内容は、いずれも、弁護士が、フランチャイズ問題に取り組む中でよく直面し、解決が難しく、悩まされている問題です。
こうした日本弁護士連合会の提言を受けて、もしフランチャイズ取引適正化法が制定されれば、それは加盟店にとっては素晴らしいことです。仮に立法化しないとしても、少なくとも上記の問題は、弁護士が問題意識を持ち、国に対して「法律を制定せよ」と意見書を提出しなければならないほど、重要で解決が必要な問題ということです。いうなれば、弁護士のお墨付きの「解決すべき問題」ということなので、決して諦めたりする必要はなく、少なくとも弁護士に相談したりする価値はあるのではないかと思います。
本意見書に記載された内容で、まさに今、悩まされているのであれば、それは弁護士も「立法化が必要なほど重要な問題」と考えているということなので、弁護士へ相談してみることをお勧めします。
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