フランチャイズと独占禁止法

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弁護士 堀居 真大

平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属

フランチャイズシステムにおいては、フランチャイズ本部と加盟店に圧倒的な力の差があることが多いことなどから、様々なトラブルが後を絶ちません。

現在、日本では、フランチャイズシステム全般を直接規律する法律はありませんが、フランチャイズシステムに関わる法律としては、中小小売商業振興法や独占禁止法があります。

いずれも、フランチャイズトラブルの防止あるいは解決に役立つ法律で、フランチャイズシステムに関わる当事者はぜひ知っておきたい法律といえます。

ここでは独占禁止法とフランチャイズシステムとの関係、そして、公正取引委員会がこれを具体化した「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(いわゆるフランチャイズガイドライン)についてとりあげます。

目次

独占禁止法とフランチャイズガイドライン

独占禁止法は、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。

フランチャイズに限らず広く商取引全般において公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにして、市場メカニズムが正しく機能することを目的とした法律です。

フランチャイズ本部と加盟店の関係についても、法律的には加盟店は本部とは別個の独立した事業主なので、その取引関係に関しては独占禁止法が適用されるのです。

もっとも、独占禁止法はフランチャイズに限らず広く商取引に適用されることから、独占禁止法がフランチャイズ事業に対して具体的にどのように適用されるかは、法文を読んだだけではなかなかわかりません。

そこで、公正取引委員会は、フランチャイズ事業において本部の加盟者に対するどのような行為が独占禁止法に抵触し得るかについて、「フランチャイズシステムに関する独占禁止法上の考え方」というガイドラインを作成し、公表しています。(これをフランチャイズガイドラインといいます)

フランチャイズガイドラインは何度かの改正を経ていますが、直近の改正は、令和3年4月28日に行われています。

以下では、フランチャイズガイドラインの内容に沿って解説していきます。フランチャイズガイドラインは、「本部の加盟者募集」に関する部分と、「フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引」に関する部分とに大きく分けられます。

本部の加盟者募集について

ぎまん的顧客誘因

独占禁止法が禁じていることの一つとして、「不公正な取引方法」があります(独占禁止法19条)。

「不公正な取引方法」の内容は多岐にわたりますが、そのうちの一つが「ぎまん的顧客誘因」です。(独占禁止法2条9項、「不公正な取引方法」(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)8項)

ぎまん的顧客誘因とは、「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること」です。

フランチャイズ本部の加盟者募集についても、当然、このぎまん的顧客誘因は許されません。

そのため、フランチャイズ本部が、重要な事項について十分な開示を行わないで、又は虚偽若しくは誇大な開示を行うことで、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると加盟希望者に誤認させて、加盟させる場合には、ぎまん的顧客誘因に該当するとして、独占禁止法違反となるのです。

小売のフランチャイズチェーンについては、中小小売商業振興法が、法律で定めた一定の事項を記載した書面を交付し、説明することを義務づけていますが、小売のフランチャイズチェーンに限らず、フランチャイズ本部による加盟者募集の局面では、独占禁止法との関係から、適切な情報開示が求められます。

開示が求められる事項

では、どういった事項について開示を行うことが必要となるでしょうか。

フランチャイズガイドラインは、 独占禁止法違反行為の未然防止の観点からは、次の事項について「開示が的確に実施されることが望ましい」としています。

  1. 加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)
  2. 加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項
  3. 加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件
  4. ロイヤリティの額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法
  5. 本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項
  6. 事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容
  7. 契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項
  8. 加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させること(「ドミナント出店」)ができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容

予想売上げや予想収益の提示について

また、フランチャイズに加盟を検討している方にとって、一番の関心事は、どれほどの収益性があるのか、つまり加盟後にどれだけ儲かるのかです。

この点に関して、フランチャイズガイドラインは、フランチャイズ本部が、予想売上げまたは予想収益を提示する場合には、「類似した環境にある既存店舗の実績等根拠ある事実,合理的な算定方法等に基づくことが必要であること、そして、本部は,加盟希望者に,これらの根拠となる事実,算定方法等を示す必要があること」を明らかにしています。

ここで注意が必要なのは、あくまでも「予想売上げまたは予想収益を提示する場合」に、こうした開示が必要とされている点です。したがって、必ずしも、常に予想売上げまたは予想収益を提示すること自体が求められているわけではありません。

また、単に既存店舗の平均収益に基づくモデル収益を提示するような場合でも、加盟を検討する方にしてみれば、出店予定店舗での予想売上げ等であると受け止めても致し方ないような提示になっている場合があります。その結果、トラブルとなることも少なからずあります。

そこで、フランチャイズガイドラインでは、こうしたケースでは、モデル収益等であることが分かるように明示するなどした上で、「厳密な意味での予想売上げ等ではないことが加盟希望者に十分に理解されるように対応する必要がある」としています。

経営に悪影響を与える情報について

コンビニエンスストアのように24時間営業が求められるフランチャイズの場合、それを維持するための人材の確保等の困難さは、経営のあり方に重大な影響を及ぼし、加盟するか否かを判断する上で重要な情報です。

そこで、フランチャイズガイドラインでは、営業時間や臨時休業に関する説明をするに当たり、「特定の時間帯の人手不足,人件費高騰等が生じているような場合等その時点で明らかになっている経営に悪影響を与える情報については、加盟希望者に当該情報を提示することが望ましい」としています。

人手不足に関する情報を提示する場合であれば、「類似した環境にある既存店舗における求人状況や加盟者オーナーの勤務状況を示すなど、実態に即した根拠ある事実を示す」ことが求められています。

ぎまん的顧客誘因に該当するかどうかの判断

フランチャイズガイドラインは、次のような事情を総合的に勘案して、加盟者募集に係る本部の取引方法が、実際のものよりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を不当に誘引するものであると認められる場合は、「ぎまん的顧客誘因」となるとしています。

  1. 予想売上げ又は予想収益の額を提示する場合,その額の算定根拠又は算定方法が合理性を欠くものでないか。また,実際には達成できない額又は達成困難である額を予想額として示していないか。
  2. ロイヤルティの算定方法に関し,必要な説明を行わないことにより,ロイヤルティが実際よりも低い金額であるかのように開示していないか。
  3. 自らのフランチャイズ・システムの内容と他本部のシステムの内容を,客観的でない基準により比較することにより,自らのシステムが競争者に比べて優良又は有利であるかのように開示をしていないか。例えば,実質的に本部が加盟者から徴収する金額は同水準であるにもかかわらず,比較対象本部のロイヤルティの算定方法との差異について説明をせず,比較対象本部よりも自己のロイヤルティの率が低いことを強調していないか。
  4. フランチャイズ契約を中途解約する場合,実際には高額な違約金を本部に徴収されることについて十分な開示を行っているか,又はそのような違約金は徴収されないかのように開示していないか

フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引

優越的地位の濫用

独占禁止法が禁じている「不公正な取引方法」の一つに、「優越的地位の濫用」があります。(独占禁止法2条9項5号)

優越的地位の濫用とは、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすることをいいます。

  1. 継続して取引する相手方に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
  2. 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  3. 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

フランチャイズシステムにおいて、フランチャイズ本部は加盟店に対して、販売方法や営業地域、商品等の注文先等について様々な制約を課す場合があります。

もっとも、こうした制約も、フランチャイズ本部の統一したイメージの確保や営業秘密を守ること等を目的する等、フランチャイズシステムによる営業を的確に実施する限度で行われるものであれば、独占禁止法違反にはなりません。

しかし、こうした限度を超えて、取引上優越した地位にある本部が、加盟店に対して、正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、優越的地位の濫用に該当し、独占禁止法違反となります。

ここでは、まず「取引上優越した地位にある」かどうかという点が問題となります。

フランチャイズガイドラインによれば、「本部が取引上優越した地位にある場合」とは、「加盟者にとって本部との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,本部の要請が自己にとって著しく不利益なものであっても,これを受け入れざるを得ないような場合」です。

そして、これに該当するかどうかは、加盟者の本部に対する取引依存度,本部の市場における地位,加盟者の取引先の変更可能性,本部及び加盟者間の事業規模の格差等を総合的に考慮して判断されます。

また、フランチャイズガイドラインは、優越的地位の濫用となりうる行為として、例えば、

本部が加盟者に対して、商品、原材料等の注文先や加盟者の店舗の清掃,内外装工事等の依頼先について、正当な理由がないのに、本部又は本部の指定する事業者とのみ取引させることにより、良質廉価で商品又は役務を提供する他の事業者と取引させないようにすること

本部が加盟者に対して、特定地域で成立している本部の商権の維持,本部が加盟者に対して供与したノウハウの保護等に必要な範囲を超えるような地域、期間又は内容の競業禁止義務を課すこと

本部が、加盟者に対し,契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにもかかわらず,24時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し,正当な理由なく協議を一方的に拒絶し,協議しないまま,従前の営業時間を受け入れさせること。

といった行為を挙げています。(他にも、仕入数量の強制や、見切り販売の制限、事前の取り決めに反するドミナント出店(加盟者の店舗の周辺地域に,同一あるいは類似の店舗を出店すること)、フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更等が挙げられています)

抱き合わせ販売等・拘束条件付取引について

独占禁止法が禁じている「不公正な取引方法」として、他にも「抱き合わせ販売等」や、「拘束条件付取引」があります。(独占禁止法2条9項、「不公正な取引方法」(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)10項、12項)

フランチャイズガイドラインは、「抱き合わせ販売等」に該当するかどうかについては、行為者の地位,行為の範囲,相手方の数・規模,拘束の程度等を総合勘案して判断すること、「拘束条件付取引」に該当するかどうかについては、行為者の地位,拘束の相手方の事業者間の競争に及ぼす効果,指定先の事業者間の競争に及ぼす効果等を総合勘案して判断することを明らかにしています。

販売価格の制限

 フランチャイズシステムにおいては、商品の販売価格に関して、フランチャイズ本部から何らかの制約を受ける場合があります。

そのため、独占禁止法が禁じている「不公正な取引方法」の一つである「再販売価格の拘束」(独占禁止法第2条第9項第4号)との関係が問題となります。

 この点フランチャイズガイドラインは、統一的営業・消費者の選択基準の明示の観点から,必要に応じて希望価格の提示を行うことは許容されるとする一方で、本部が加盟者に商品を供給している場合に、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束することは,原則として独占禁止法が禁じている「再販売価格の拘束」に該当するとしています。

また、本部が加盟者に商品を直接供給していない場合であっても、フランチャイズ本部が、商品又は役務の価格を不当に拘束する場合は、独占禁止法が禁じる「拘束条件付取引」に該当するとしています。

独占禁止法違反の効果

独占禁止法違反に違反する本部事業者に対しては、そうした違反行為を速やかに排除するよう命じる「排除措置命令」という行政処分が公正取引委員会から命ぜられることがあります(独占禁止法第20条)。

さらに、優越的地位の濫用行為が行われた場合には、違反行為に対する課徴金が課せられる場合もあります(同20条の6)。

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