取締役の任期
取締役の任期は、原則2年、と会社法によって決められています。
つまり、令和1年の定時株主総会で選任された取締役の任期は、令和3年の定時株主総会までということになります。
しかし、非公開会社(すべての株式が譲渡制限株式である会社)においては、任期を最長10年まで伸長することが可能です。
取締役の任期が満了したときは、役員の変更登記をしなければなりません。
前年度の取締役が就任しつづける場合でも、登記は必ず必要になります。
登記は、効力発生日から2週間以内にしなければならず、これを怠ると、過料という制裁金を課せられてしまう可能性があります。
取締役の任期を長くするか、短くするかには、それぞれメリットとデメリットがありますので、以下、検討していきます。
長い任期によるメリット
取締役の任期を長くすることのメリットは、登記をする費用と手間を抑えられる点です。
登記をする際には1万の登録免許税が必要になります。さらに、司法書士などに依頼すれば約3万円ほどの報酬がかかることになります。
例えば、任期を10年にした場合、役員の変更の登記は10年に1度で済みますので、その分、費用が抑えられることになります。
長い任期によるデメリット
取締役の任期を長くすることのデメリットは、取締役の変更をしづらくなるという点があります。
取締役が退任するには、「任期の満了」「辞任」「解任」などの事由が必要です。
例えば、任期を10年にした場合、株主が、その取締役をやめさたいと考えたとします。
その場合、取締役が辞任に応じてくれないとすると、10年の任期が満了することを待つか、株主総会において解任することが必要になります。
しかし、解任するには、株主総会において、解任決議を満たす議決権を保有していなければならず、また、解任することに正当な理由がなければ、取締役に損害賠償を請求されてしまう可能性があります。
さらに、登記簿には「解任」と記載され、取引先や金融機関からの印象が悪くなってしまう可能性もあり得ます。
その他のデメリットとして、役員の変更の登記を忘れてしまうこともあげられます。
10年という長い年月なので、任期が満了していることに気が付かず、役員の選任や登記を怠ってしまうケースがよく見られます。その場合も、過料の制裁金が課せられてしまうので、注意が必要です。
任期を何年にするか
以上に見てきたように、任期を何年にするかは、それぞれにメリットとデメリットがあります。
では、取締役の任期は何年にするのがよいでしょうか。
それは、会社の様態によって決定すべきでしょう。
1人でやられている会社や、家族経営で、株主と取締役が同じであるような会社ならば、任期を長くしても、問題が起こる可能性は少ないように思われます。
反対に、取締役が複数名いたり、株主と取締役が異なるような会社においては、任期を短くしておいた方が、役員の変更が行いやすいため、柔軟な対応ができ、おすすめです。 任期を短くしておけば、取締役の経営手腕が好ましくなかったり、経営方針が異なるなどの事態が起きても、任期の満了時に、別の取締役を選任することで、当該取締役を、リスクなしでやめさせることができます

司法書士 小川 和也
2011年 愛知県立瑞陵高校卒業
2015年 立命館大学法学部卒業
同年 司法書士試験合格
同年 名古屋市丸の内・安井司法書士事務所に入所
2019年 梅村司法書士事務所 所属(名古屋市今池)

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