使用者責任と社員への求償

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弁護士 堀居 真大

平成2年3月 岐阜高校を卒業後、同年4月慶應義塾大学商学部入学
平成6年4月 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属
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Q
社員が業務中に、自転車を運転していて歩行者にぶつかり、ケガをさせてしまいました。業務中の事故の場合は会社も使用者責任を負うとのことで、被害者には会社から賠償金を支払いました。
しかし、事故を起こした社員も責任はあると思うのですが、会社から社員に賠償金の一部を請求したり、給料を減額したりしても良いのでしょうか。

業務中の事故と会社の使用者責任について

例え社員が起こした事故でも、業務中に起きた事故であれば、民法715条に基づいて、会社も損害賠償責任を負う場合があります(参考:通勤中の交通事故と会社の使用者責任)。

この損害賠償責任は「不真正連帯債務」といって、社員の責任がどれだけ大きいかに関係なく、会社は被害者に損害額の全額を負担しなければなりません。「社員が何割、会社が何割」というわけにはいかないのです。

理不尽なように思えますが、民法では「会社は従業員を使用することで利益を得ているのだから、それによって生じた損失も負担すべきである」との考えで、会社に「使用者責任」という特別な損害賠償責任を定めているのです。(使用者責任については、こちらも参考にして下さい。▼社員の不祥事と会社の使用者責任

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社員に対する求償

被害者の損害額を会社が全額支払った場合には、会社はその損害額の一部を社員に請求することができます(「求償」といいます)。

会社が715条1項本文に基づいて被害者に損害を賠償した場合には、同条3項で「使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない」と定めています。会社は従業員に、被害者に支払った損害額のうち、その一部を請求することができるのです。

では、例えば従業員の落ち度が極めて大きかった場合などでは、会社は従業員に、被害者に支払った損害賠償金の全額を求償できるでしょうか。

判例を見ると、従業員が故意に事故を起こしたような場合でない限り、従業員の負担割合は0%~50%の範囲内である場合がほとんどです。つまり、従業員の負担割合は制限的に解されており、従業員の過失だからといって当然に従業員に全て責任を負わせることはできません。

求償割合の判断基準

では、上記の負担割合は、どのような判断基準で決まるのでしょうか。

この点については、最高裁判例(最判昭和51年7月8日判決)が参考になります。

同判例では、使用者の被用者に対する求償権の判断において「事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情」を判断要素として「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」請求できる、とした上で、結論として「使用者が従業員に求償できる金額は損害額の4分の1にとどまる」と判示しました。

つまり、求償できる負担割合は一律では無く、会社の事業の性格や業務内容など諸般の事情を総合的に考慮して、ケースバイケースで決めるのです。具体的な割合がどれくらいになりそうかについては、弁護士などの専門家に相談するなどして判断されることをお勧めします。

社員から会社に求償することはできるか

逆に、業務中に従業員が事故等で第三者に損害賠償責任を負った場合に、その損害を従業員が賠償したとします。その場合、従業員は会社に対して、一定の負担割合に基づく求償をすることはできるのでしょうか。

715条3項は「会社から従業員に」対しての求償権を定めていますが、「従業員から会社に」対する求償権には言及されておらず、民法に規定がない以上は請求できないようにも思えます。

しかし、会社が損害賠償した場合にだけ従業員に求償できて、従業員が損害賠償した場合には会社に求償できないというのは理不尽です。

最近の裁判例では、業務中の事故が原因で従業員が被害者に賠償した場合に、その後従業員が会社に対して求償することを認めました。

なので、会社は、従業員が業務中の事故につき自分で賠償した場合でも、従業員(あるいはその保険会社)から求償されるかもしれない、ということを念頭に置いておく必要があります。

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平成2年3月 岐阜高校を卒業後、同年4月慶應義塾大学商学部入学
平成6年4月 三井海上火災保険株式会社入社(現 三井住友海上火災保険株式会社)
平成23年12月 愛知県弁護士会登録/名古屋第一法律事務所所属
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