
弁護士 山本 律宗

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フランチャイズ契約と信頼関係の破壊
フランチャイズ契約は、通常、一定期間継続する契約であり、当該契約期間を通じて双方が投下資本を回収などのために契約期間の継続に対して期待・利益を有しています。
特に、一般的にフランチャイザーに比べて経済力や交渉力等において弱者であることの多い加盟店に取っては、何らの限定も無く、解除を認めると投下資本を回収することができず、致命的な経済的打撃を被る結果となります。そこで、裁判例の多くは、法律上の又は契約上の解約事由があるばかりでは足りず、契約の継続を著しく困難にするような信頼関係の破壊が認められることを必要としています。
信頼関係の破壊を認定する考慮要素
<名古屋高裁判所平成14年5月23日判決>
加盟店がフランチャイズ本部の経営手法が詐欺的で悪質であるなどと掲載した新聞記事等を店内に掲示し、フランチャイズ本部から再三亘って撤去するように止めたもののこれに応じず、継続して掲示する態度を示した事案では、契約の継続を著しく困難にする程度に信頼関係を破壊されたとして、フランチャイズ本部からの解除を認めました。
<東京地裁判決平成17年1月25日判決>
フランチャイズ本部が、加盟店に対して開業時までに支払うべき保証金等の支払を再三に亘って請求を受けたにもかかわらず、支払わなかったという事案で、信頼関係が契約の継続を著しく困難にする程度に破壊されたとして、解除を認めました。
※同種事案として東京地裁平成18年2月21日判決、福岡高等裁判所平成19年7月19日判決
<東京高裁平成11年12月15日判決>
加盟店が売上の一部を私的に費消することがあり、加盟店の経理処理に不正計上等があった事案で、フランチャイズ本部からの契約の解除を認めました。
裁判所は、加盟店の契約違反(債務不履行)の内容がフランチャイズ契約の本質に関わるようなものであるか否か、その程度が契約を継続させるのに重大な影響を及ぼすか否かを判断しているものと考えられます。
上記の裁判例のうち、名古屋高裁平成14年5月23日判決においては、いずれの場合もフランチャイズ本部が加盟店に対して一度も警告や催告などをせずに契約を解除する行為に出たとすればおそらく、契約の継続を著しく困難にする程度の信頼関係の破壊は認められなかったと思います。
他方で、東京地裁平成17年1月25日判決においては、フランチャイズ契約において、加盟店がフランチャイズ本部のノウハウ等を利用する対価として金員を支払うことはフランチャイズ契約の本質に関わる部分で有り、これが履行されない場合には契約の継続に大きな影響を及ぼすことが明らかですから、不払いの程度にもよりますが比較的信頼関係の破壊が認められやすいといえます。
まとめ
フランチャイズ本部からのフランチャイズ契約の解除が有効とされる程度の信頼関係の破壊が認められるか否かについては、裁判所がフランチャイズ契約の本質に関わるものであるか否か、その義務違反の程度・回数、期間等を踏まえ、その違反が契約の継続に与える影響の大きさについて判断して決することになります。
もっとも、先の裁判例で見たように、加盟店が本来、フランチャイズ本部に支払うべき金員を支払っていない場合には契約解除が有効とされやすいので不払いには気をつける必要があります。
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